米国がISIS問題に武力介入したワケとは
『高城未来研究所「Future Report」』第192号より一部抜粋
今週は米国との事前協議なく、独メルケル首相と仏オランド首相が電撃的に和平会談を設け露プーチン大統領と会談し、ウクライナ紛争を停戦に持ち込んだことにつきまして、私見たっぷりにお話ししたいと思います。
先週2月12日、長く続くウクライナ紛争を終結させる第一歩を踏み出すために、独メルケル首相と仏オランド大統領は米国との事前協議なく、ロシアのプーチン大統領との和平会談のためにベラルーシのミンスクに訪れました。これは、欧州で表面化していない「よっぽどのことが起きそう」であることを暗に示しており、また、ロシアもそれを望まないことから、和平会談が急遽行われることになりました。
考えてみればおかしな話で、ドイツもフランスもロシアもウクライナ紛争の当事者ではありません。和平に関して合意した後も、ロシアのペスコフ報道官は「ロシアはウクライナ問題解決の保証人であって紛争当事者ではない」と発言しており、あくまでも「部外者」であることを対外的には強調しています。
しかし、もはや世界は隠し事がほとんどできない時代に成熟しつつあります。すなわち、「情報」を集めることではなく、独自の「見方」をつけることが大切な時代なのです。かつて本メールマガジンでお伝えしましたように、ロシアの特殊部隊が観光バスに乗ってウクライナに観光客として入り込んでいるのは明らかで、その観光客に関して、ロシア政府はなにかを言える立場ではなく関与していない、という立場を貫いていますが、世界中の多くの人々は、ウクライナ紛争はロシアと米国の代理戦争であることを理解しています。このような状況は米国も同じで、どんなに軍産複合体による外注軍事会社がウクライナで戦闘を繰り広げても、米国政府としては、「関与していない」立場をとるしかありません。
結局、このようなEUの「エッジ」で紛争状況が長引けば、割りを食うのは欧州全般であり、欧州の大国ドイツとフランスは一刻も早く紛争が収まることを願うばかりのはずです。なぜなら、欧州経済問題によって各国の情勢が不安定な現在、ウクライナの紛争が長引く、もしくは大きくなると、欧州は歴史的に再び世界大戦が近づくことを理解しており、一方遠く離れた米国のネオコンは、宿敵ロシアとの最終決戦から世界大戦を望んでいる状況にあります。米国は常に地政学的に優位な駒を進め、現在問題があるウクライナも中東も極東からも、米国本土から距離的に離れている場所での紛争を演出しています(一方、地政学的に問題あったキューバは取り込みました)。
米国としてみれば、今回のようにドイツとフランスがロシアと近しくなると巨大なユーラシア大国に連なる可能性があるため、好ましく思っていません。ですので、戦争は避けたいと思っているオバマ大統領も、停戦合意後も「ロシアへの経済制裁は続ける」確約を、急遽メルケル首相と話し合いました。
これは僕の推測にすぎませんが、プーチン大統領はメルケル首相とオランド大統領に、ウクライナから米国(共和党ネオコン)を撤退させるように話したはずで、それをメルケルは飲んだはずです。そうしなければ、停戦合意に至るはずがありません。そして、ウクライナのポロシェンコ大統領に、米国(共和党ネオコン)の代理人であるネオナチ勢力を政権から遠ざけるようにも確約させたはずです。事実、ウクライナのネオナチ勢力は停戦に反対していますが、米国が引き下がるのであれば、停戦に向かうしかありません。すなわち、ウクライナ紛争は、米国民主党オバマ大統領と共和党ネオコンの交渉ステージにあがったはずです。そこでオバマ大統領は、共和党ネオコン勢力との交渉に「飴」を用意しました。それが、ISISへの武力介入です。
あれほど拒んでいたISISへの大きな武力介入に関して、オバマ大統領は、期限付きで進攻(限定的な地上作戦)に出ることを急遽発表しました。これは、
『高城未来研究所「Future Report」』第192号より一部抜粋
著者/高城剛
1964年生まれ。現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。毎週2通に渡るメルマガは、注目ガジェットや海外移住のヒント、マクロビの始め方や読者の質問に懇切丁寧に答えるQ&Aコーナーなど「今知りたいこと」を網羅する。
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