米国仕込みの北朝鮮エリート集団
さきごろ、来日した韓国の北朝鮮問題専門家グループと意見交換する機会がありました。
私に対する先方の要望は、集団的自衛権の行使容認の先にある日本の安全保障政策と日米同盟の展望、中国の軍事力に関する分析、といったところでしたが、私にとっても大いに勉強になる貴重な機会となりました。
それは、金正恩第一書記に率いられる北朝鮮が欧米流、それも米国的な発想を身につけたテクノクラート集団によって国家建設を進めている可能性があるという私の仮説について、その裏付けとなるような情報がもたらされたということです。
かねてから私は、北朝鮮の核兵器と弾道ミサイルの開発は、戦後の米国をモデルに経済建設を進めることが目的となっている可能性がある、とながめてきました。
核兵器と弾道ミサイルの開発を進めることにより、世界が北朝鮮を核保有国と認める環境を創りだし、まずはインドと同じような国際的地位を勝ち取り、その段階で核抑止力を備えたことを理由に国内の軍部に軍縮を実行させ、過大な通常戦力の負担を軽くして経済建設を推進しようとしているのではないか、というものです。
米国は戦後、アイゼンハワー政権の8年間に戦術核兵器を一挙に100倍にまで増やす一方、通常戦力の大幅削減によって財政的負担を軽減し、経済建設を推進しています。その様子は西恭之氏(静岡県立大学特任助教)のコラム(2013年4月11日号)に詳しいのでご参照ください。それを踏襲したのが中国の経済的成功という見方も成り立ち、北朝鮮が米中両国を手本にしないわけはないと、私は考えたのです。
若い金正恩第一書記だけを見ると頼りなく、不安定な感じがするかも知れませんが、これを強力なテクノクラート集団が支えているとすれば、そのような動きも不可能ではありません。私には、金正恩体制になってからの北朝鮮の動きの背後に、欧米仕込みのテクノクラート集団の存在が感じられてならなかったのです。
その点を韓国側にぶつけてみました。すると、米国仕込みのテクノクラート集団が手腕を発揮している、と回答が戻ってきたのです。
「米国の大学院に何年も在学して博士号を取るというケースはないが、1年くらいの研修には、毎年、多くのテクノクラートが派遣されている。米国に行くケースが多いが、欧米で研修を受ける北朝鮮のテクノクラートは年間1000人ほどにのぼる」
どんなところで研修しているかというと、有名大学としてはシラキュース大学があり、ここでは経済問題について学んでいるようだ、とのことでした。
調べてみると、びっくりでした。なんとシラキュース大学では、IT関係の研修まで行われているではないですか。