このまま1バレル50ドルが続けば景気が良くなる明快な理由
『ビジネス知識源プレミアム:1ヶ月ビジネス書5冊を超える情報価値をe-Mailで』753号より抜粋
【米国にとって】
250万バーレルのシェール・オイルを含む生産量で言えば、1位のサウジ、2位のロシアに次ぐ世界3位の産油国になった米国では、原油価格の下落は、
・供給側の事業にとっては売上が半分に減るマイナスですが、
・需要側(世帯と企業)には、エネルギー支出のマイナスというプラス要素です。
(注)世界の原油生産は、1位サウジアラビア1152万バーレル、2位ロシア1078万バーレル、3位米国1000万バーレル、4位中国418万バーレル、5位カナダ394万バーレルです。(BP世界エネルギー統計:2013年実績)
このため、米国のGDPでは、原油価格の下落のマイナスとプラスが相殺されます。
【日本にとって】
エネルギーの全量を輸入している日本では、$50の原油価格が続くと、GDPでは6兆円(1.2%)のプラス要素になります。
(注)日本の原油輸入のピークは1973年であり、日量500万バーレルでした。2013年は、その70%の360万バーレルです。日本経済では、2度のオイルショックを機に、世界で一番産業の省エネが進んでいます。
消費税の増税(3%)は、6兆円の消費を減らす要素でした。原油価格の$50への下落によって、消費税増税のマイナス分が相殺されます。これは、大きなことです。
(注)1バーレル$100と高かった2013年の原油輸入額は、16兆円でした。$50の水準が続くと、2015年は、おなじ量を輸入しても、6兆円支払いが減ります。GDPのマイナス要素である輸入が、6兆円減ると、日本の実質GDP(実質所得額)では6兆円(1.2%)のプラス効果が生じます。
消費者物価の中では、エネルギーが占めるコストは総平均で8%です。
1万円のホテル代に800円の電力費・エネルギー費が含まれ、店頭の商品価格(300円とします)のうち24円がエネルギーコストです。
流通の食品スーパーでも、売上の2%近い電力費、冷暖房費を使っています。タクシー代の中では何%でしょうか。
1バーレル$50という価格が続き、$1が120円付近の場合、消費者物価に対してのエネルギーコストは3%減って、5%になります。
エネルギー費用の低下が2年続き、その分が100%物価に転嫁されれば、消費者物価は3%下がります。
量的緩和によって、生鮮食品を除く消費者物価が2%上がるマイルドなインフレにもって行きたい政府・日銀にとっては、物価の3%の低下は、「不都合なこと」でしょう。
しかしエネルギーコストを負担している企業と、その代金を支払っている消費者にとっては実質で3%のプラスになります。
エネルギーコストの低下があると経済は上昇し、景気は浮揚します。
サウジアラビアが減産しないことは、エネルギーを輸入しなければならない日本にとっては、歓迎すべきことです。
『ビジネス知識源プレミアム:1ヶ月ビジネス書5冊を超える情報価値をe-Mailで』753号より抜粋
著者/吉田繁治
東大フランス哲学専攻。経営と情報システムのコンサルタント。各社の経営顧問を歴任。戦略的システム開発でシステムデザインを担当。最新かつ高度な経営原理も、わかりやすく実践的に提供することに定評がある。
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