ついに首都圏の主要都県で緊急事態宣言が発出され、1日あたりの罹患者が東京で2000人を連日超えるなど、感染拡大が止まらない新型コロナウイルス感染症。そんな中、東京都医師会長の尾崎治夫氏が年末に発言した内容に賛否が巻き起こっています。その発言に居たたまれなくなったという元大学病院副院長の友人らからメールが届いたと明かすのは、軍事アナリストで危機管理の専門家である小川和久さん。小川さんは自ら主宰するメルマガ『NEWSを疑え!』の中で、医療関係者が尾崎会長の発言に激怒したという理由を紹介するとともに、実際にコロナと戦うある勤務医から届いたという激烈な批判メールの一部を公開しています。
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東京都医師会・尾崎会長に医療現場が激怒する理由
東京都医師会長の尾崎治夫さんの発言に賛否の嵐が巻き起こっています。
「東京都医師会のトップが焦りを募らせている。尾崎治夫会長は連日のようにメディアに出演し、新型コロナウイルスへの感染防止を呼びかけているが、一向に人の動きが止まらず、東京都の1日の感染者数は過去最高を記録。『1日1000人の感染者は現実になる。既に助かるべき命が助からない状態になってきている。ロックダウンに相当する強い対応を』。語気を強め、人々や政府に訴えかけている」(出典:12月28日付毎日新聞)
尾崎さんは続けます。
「高齢者が外出しなくなると、認知症や(心身の機能が低下する)フレイルを引き起こす心配もあります。だから本当はロックダウンや緊急事態宣言はいらないし、出してほしいとは思っていません。
でも、みなさんに守ってもらえないなら、緊急事態宣言やロックダウンに相当する対応しかないんです。まだ1日の感染者数が1000人を超えていないから、と現状の数字で判断していては手遅れになります。今、この時点で人の動きを止めず、このまま感染者が増えれば、医療が崩壊するんです。自分や自分の周りの人が、体調が急変したのに、どこの病院にも受け入れられずに亡くなっていく、そういうのは誰でも嫌でしょう 」
私は尾崎さんの発言について、同様の危機感を国民が共有すべきだと思い、SNSで拡散しました。
そして、尾崎さんは12月31日から元日に掛けてのテレビ朝日『朝まで生テレビ』に出演、持論を展開しました。
これに対して、第一線の医療に関わる旧友から「居たたまれずにメールした」と厳しい指摘が寄せられました。この人は旧帝国大学の医学部教授や大学病院の副院長を歴任し、厚生労働省でも行政実務を経験しています。
日本の医師は診療科目によって緊急事態にも手を汚さず、「楽をできる自由」を満喫している、その代表格が尾崎さんだというのです。
- 国民皆保険が実現して60年になるのに、まだ無医村がある実情をどう思うのか。電力会社は発足10年で日本国内の100%の電力供給を実現したのに、医師会は声をあげ、どこまで本気で政府を動かそうとしてきたのか。
- 大規模災害で政府、自治体、マスコミなどを糾合してバックアップに取り組んだ経験からして、尾崎さんにはそんな経験をしたことはおろか、緊急事態に対する図上演習すらしたことがないのは、発言を聞けば明らかだ。
- 江戸時代まで「医者」と呼ばれていたのが、明治維新後に「医師」と尊称されるようになったのは、常に住民とともにあり、陸軍の師団長と同等の影響力のある存在と認識されたからで、だからこそ、警察とともに内務省の一翼を担うよう法制上も位置づけられた。
- いまこそ医師会はその原点に戻り、医療の責任と任務分担を政府に投げかけるべきだ。
私の友人だけでなく、SNSでの尾崎さんのコメントには第一線でコロナと戦っている勤務医から、激烈な批判が寄せられ、コロナとの戦いの語られざる一面を見せつけられた思いです。
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