『ロシア政治経済ジャーナル』No.1143(2015.01.05号)より
2014年、たくさんの人から、「世界がいまどうなっているのか、さっぱりわからなくなった!」という話を聞きました。わかります。しかし、わからないものを「わかるようにする方法」は確かに存在しています。
実をいうと、世界情勢は、一つのストーリーになっている。なぜそうなのかというと、要するに「因果関係」で動いているから。アメリカがこういうことしたから、中国やロシアがこう反応して。それに対してアメリカがまた反応し、さらに中ロが反応し、と。全部つながっているのです。
だから、今起こっていることを知りたければ、過去から順番にお話するしかない。
どこからお話しましょうか。
アメリカの没落と中国の台頭
毎回同じ話からはじめますが、仕方ありません。
1945年~1991年を「冷戦時代」といいます。別の言葉で「米ソ二極時代」。
1991年末、ソ連が崩壊し、二極のうち一極が消えた。それで、「アメリカ一極時代」が到来したのです。
アメリカ一極時代は、1992~2008年までつづきました。そう、アメリカ一極時代は、08年からの世界的危機で終焉したのです。
「なぜ、アメリカ一極時代は終わったの?」これについて一般的には、「アメリカ不動産バブル崩壊」「サブプライム問題」「リーマン・ショック」などで解説されます。もちろん、それは正しい。
しかし、RPEでは、もう一つ、もっと重要な理由があると書いています。つまり、「アメリカ一極主義」対「多極主義」の戦いの結果、「多極主義陣営が勝利したのだ」と。
「多極主義陣営」にいたのは、「ドイツ、フランス、中国、ロシアとその仲間たち」です。ドイツ、フランスは、現在再びアメリカの属国に戻っています。しかし、1992~07年ごろまで、両国は、「EUがアメリカにかわって世界の覇権国になる」という野望を抱いてがんばっていたのです。
その方法は、「EUの東方拡大」と「ユーロをドルにかわる基軸通貨にすること」でした。
いずれにしても、ドイツ、フランス、中国、ロシア、その他が結託してアメリカの覇権に挑戦した。その結果起こったのが、「アメリカ発世界的経済危機」だった。この辺の事情、話したら一冊本が書けるほど長くなります。
「アメリカ一極主義」対「多極主義」戦争の結果、多極主義陣営が勝利した。それで、世界的経済危機が起こった。多極主義陣営の目論見どおり、アメリカは沈みました。
しかし、当然ながらアメリカ経済危機は、多極主義陣営にも甚大な被害を与えたのです。特に多極主義陣営を主導してきた独仏を中心とするEUとロシアは、大きな打撃を受けました。
唯一、この危機を比較的軽症で(少なくとも表面的には)乗り切ったのが中国です。中国は、危機が最悪だった09年も、9%を超える成長をはたしました。
そして、世界では09年、「G2(=米中)時代」という言葉がつかわれるようになった。ある面当然ですね。中国は現在、GDPでも軍事費でもアメリカに次ぐ世界2位です。
凶暴化する中国
ライバル・アメリカの没落を確信した中国は、露骨に国益を追求しはじめます。
「国益」とはなんでしょうか? いろいろありますがが、私がここでいう国益とは、「地域覇権国家になるために、南シナ海、東シナ海を支配する」という意味です。
中国が南シナ海、東シナ海支配を目指す理由は二つあります。一つは資源。もう一つは、軍事的、安全保障上の理由です。
中国の狙いの一つは、海洋権益の確保だ。中国側は南シナ海の資源埋蔵量を石油が367億8千万トン、天然ガスは7兆5500億立方メートルと推計、「第2のペルシャ湾」と期待している。
もう一つは米国の軍事力への対抗だ。潜水艦基地のある中国海南島は南シナ海の深海部につながる。南シナ海から西太平洋に進出すれば、米海軍のプレゼンスをそぐことも可能になる。(産経新聞2014年5月9日)
基本的に中国が、尖閣、沖縄を「自国領」と主張する理由も同じ。資源と安全保障上の理由。皆さん、第1列島線という言葉を聞いたことがあるでしょう?
第一列島線は、九州を起点に、沖縄、台湾、フィリピン、ボルネオ島にいたるラインを指す[2]。中国海軍および中国空軍の作戦区域・対米国防ラインとされる。(Wikipediaより)
中国はこのラインを完全に支配したいので、最近は尖閣ばかりでなく、「沖縄も中国固有の領土である!」と主張しているのです。
さて、現実になにが起こったか? 2010年9月、皆さん覚えておられますね?
そう、尖閣中国漁船衝突事件が起こった。
これをきっかけに、中国は全世界にむけて、「尖閣は中国固有の領土であり、核心的利益である!」と宣言します。そして、何も悪くない日本に対し、レアアースの禁輸など異常に過酷な制裁をして、世界を驚かせました。
さらに2012年9月、日本が尖閣を国有化すると、中国は狂ったように反発。中国全土で「反日デモ」が起こり、日中関係は戦後最悪になってしまいました。
そして、中国は「尖閣国有化」の二ヵ月後、モスクワで「日本を封じ込めるための驚愕の戦略」を提案したのです。
長くなったので、つづきは次号にしましょう。
どうですか、皆さん? 世界情勢はすべて「因果関係」でなりたっている。丁寧に順番においかけていけば、何も難しいことはないのです。
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『ロシア政治経済ジャーナル』
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