1992年以降、小学校の保健の教科書に性に関する記述が見られるようになったものの、未だ我が国では「性教育」がタブー視されがちです。こんな現状に異を唱えるのは、健康社会学者の河合薫さん。河合さんは自身のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』で、そもそも性教育とは「人権教育としての性の安全」の観点から行われるものであり、タブー視すること自体が子供の不幸につながるとしています。
※本記事は有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』2018年6月6日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。
なぜ日本は「性教育」をタブー視するのか? 「性・愛・命」の教育
性や避妊の話題がタブー視されない社会にしたいと、スウェーデンに留学した大学生の女性が、「#なんでないの?」プロジェクトをスタートしました。
発起人の女性はスウェーデン留学中、日本では医師の処方箋がないと入手できない緊急避妊薬が薬局で売られていたことに驚いた、その他にも日本では見たことのない避妊シール、相談や検診など、さまざまな医療の専門家たちの取り組みに感銘を受けたといいます。
「若い人たちが守られてると思った」そうです。
「#なんでないの?」プロジェクトでは、スウェーデンやカナダの取り組みを紹介。東京と大阪でスウェーデン留学生を招いた講演会を開く予定です。
欧州では性教育に積極的に取り組んでいますが、日本では授業で「性」を取り上げることを問題視するなど、世界の流れとは真逆の方向にむかっています。
今年3月、足立区立の中学校で「避妊や人工妊娠中絶について扱う授業」が行われたことについて、都議会自民党の古賀俊昭都議が「生徒の発達段階を無視した指導で不適切」などと批判。4月26日には、東京都教育委員会が足立区に対して指導する方針を決めたと報じられました。
問題となった授業は「自分の性行動を考える~妊娠と中絶~」というテーマで中学3年生を対象に行われたもので、
- 性の特徴について人間と他の生き物の違い
- 避妊の方法や人工妊娠中絶について
- 中絶は10代の割合が高いこと
- 中絶が法律的に認められている時期があること
- 避妊具の種類や入手方法
などの講義と、具体的な事例に基づいたパネルディスカッションが行なわれました。
また、授業をした理由について学校側は、「事前に実施した妊娠・中絶に関するアンケートで、知識の乏しさが歴然としていることがわかり、確実に大人に近づいていく生徒に『性の安全』を保障するため、人権教育の一環として行なった」と説明しています。
一方、文部科学省の学習指導要領では、中学校での性教育について「受精、妊娠を取り扱い、妊娠の経過は取り扱わない。保護者の理解を得る」という表記があり、先の授業は指導要領を逸脱していると判断されたのです。