日大アメフト部の選手が「監督やコーチの指示」で悪質タックルをおこなったと告白し、日本中で話題となった22日の緊急会見。この会見を最後までみたという、メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』の著者で健康社会学者の河合薫さんは、自身が「剣道部」だった頃のエピソードを紹介するとともに、会見をおこなった日大アメフト部の選手にあえてエールを送ります。
※本記事は有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』2018年5月23日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。
レギュラーと補欠。日大アメフト選手の会見に関する雑感
日大アメフト選手の謝罪会見は見ていて、とてもとても切ない気持ちになりました。まだ、20歳。あのフラッシュの中での記者会見は、本人の想像以上のプレッシャーと緊張との戦いだったと思います。
記者たちはしきりに「なぜ、監督やコーチの指示に従ってしまったのか?」と繰り返し、その度に唇を噛み締め、「レギュラーから外され,練習からも外された」と答える彼。
「ああ、この人たちはレギュラーから外されること、試合に出れないということが、生活のすべてがアメフトになっている学生にとって、どれほどキツいことなのか。わからないのだなぁ」と、ため息が出ました。
そして、私は…、“あの時”のことが脳裏に蘇りました。
何度かお話していますが、私は大学時代剣道部(高校もですが)。バリバリの体育会系の剣道部です。
私は50人近くいる剣道部の中で、ただひとり1年生の時からレギュラーで試合に出場し続け、常にチームのエースを張っていました。
ところが、1試合だけ出られなかった。大学生にとって一番大切な試合と言っても過言ではない、4年生最後の引退試合となる関東学生大会です。
なんとANAの採用面接と重なってしまったのです。ものすごくショックで、どうにかならないものかと会社に問い合わせまでしたほどでしたが、覆るわけがありません。
「団体戦で全国大会に出よう!」を合い言葉に(個人では出てます!)、一緒に頑張ってきた仲間に、自分の都合で出場できないのは申し訳ないと思いました。
「試合に出られなくて、本当にごめんね」と謝る私に、「薫ちゃんのいない分まで、頑張るから!任せて」と答える仲間の存在はうれしかった。
……いいえ、違います。それはウソ。
「薫がいないのはイタいな~」と言われることに快感を覚え、表向きは「私がいなくても大丈夫だよ」と言いながらも、内心は「私が出なきゃ、チームは勝てない」と思っていたのです。完全なる強者の思考回路です。
そして、試合当日。面接試験を終えて、私が試合会場に着いた時、全国大会行きが懸かった試合が行われている最中でした。
先鋒、次鋒が引き分けて、中堅が負けた。誰もが「もう終わりだ」と諦めかけていたのですが……、な、なんと私が抜けたことで入ったマンネン補欠のミヤちゃんが、見事な一本を決め、最後の大将にバトンを渡したのです。