一時は倒産寸前とも言われたマツダですが、2013年以降、見事なV字回復を果たしています。業績悪化にもがき苦しむ企業も多い中、マツダはどのようにして今日の好調を手にすることができたのでしょうか。今回の無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』では、著者の梅本泰則さんがその戦略を分析するとともに、他業種がマツダのV字回復から学ぶべきことを記しています。
マツダの弱者の戦略
どこかで気にしているのでしょうか、最近マツダの記事が目にとまります。そのマツダ、業績が好調です。2017年度の売上高は3兆4,740億円(前年比8.1%増)、営業利益は1,464億円(前年比16.5%増)、世界販売台数が163万台(前年比5%増)、という発表がされました。
マツダは、業績悪化のため1997年にフォードの傘下になります。しかし、2008年のリーマンショックの影響で、フォードを離れました。その後、4年連続で赤字を計上してしまったのです。崖っぷちだったといっていいでしょう。
ところが、2013年以降業績を持ち直し、V字回復をしてきました。いったい、どんな手を打ったのでしょうか。気になりますね。
日経ビジネスや東洋経済など経済誌の記事を読むと、生産ラインの効率化や、デザインコンセプトの統一といったことが業績回復の要因としてあがっています。素人の私には、その点については何も分かりません。
そんなものなんだと思っていたところ、先日マツダの方から面白い話を聞くことができました。カスタマーサービス本部長の梅下隆一氏です。講演で、マツダの業績が回復した一つの要因を話してくれました。
そこには、生産や製品についての話は出てきません。焦点は、お客様をどうやって増やしたかという所にあてられていました。
マツダの戦略
お話の結論を言うと、お客様をファンにして絆を深めることが重要だということです。いいですねえ。まさに、ワン・トゥー・ワン・マーケティングです。
通常、メーカーは製品から市場を見ます。良い商品を作ればお客様に買ってもらえるはずだと考えるのです。ですから、製品が売れなければ、それは販売力のせいだと思ってしまいます。いわゆる、マーケティング・マイオピア(近視眼)という状態ですね。
ところが、マツダはそうではありませんでした。クルマと同時に、クルマを買う人を見ています。大手自動車メーカーは、大量の広告を流して買う気を誘うのが常套手段です。また、販売車種を増やして、一網打尽を狙います。強者の戦略です。
しかし、弱者であるマツダには、そんな手は打てません。そこで、グラスルーツ(草の根)作戦で、マツダの熱烈なファンを増やそうと考えたわけです。梅下氏は、それを「上からではなくボトムから」と表現しています。そして、自社の持つ「強み」を活かそうと考えました。
つまり、マツダには長年販売してきた強力な車種があります。「ロードスター」です。この「ロードスターのお客様」を、重要なターゲットにしました。そして、そのお客様をマツダの熱烈なファンにすることを考えたのです。さらには、そのファンとの「絆」を深めることを戦略としました。では、そのためにどんな方法をとったのでしょう。