ネットがざわついた「運賃無料タクシー」の解決すべき問題点

nakajima20180515
 

2011年、「最年少社長」として弱冠15歳で起業し注目を集めた吉田拓巳氏が、またも「無料タクシー」という画期的なベンチャーを立ち上げ話題となっています。今回のメルマガ『週刊 Life is beautiful』では著者でアメリカ在住の世界的エンジニア・中島聡さんが、このビジネスモデルについて「面白い」と評価しつつも、自分だったらどのような形で無料タクシービジネスを展開していくかという、まさにITエンジニアならではのアイデアを提案。その他、カーナビや自動運転に関する「最近の気になる記事」も複数紹介しています。

※ 本記事は有料メルマガ『週刊 Life is beautiful』2018年5月15日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール中島聡なかじまさとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

私の目に止まった記事

日本初 運賃無料“タクシー”運行へ 「15歳起業」の若手実業家が新会社

最年少社長として15歳で起業したことで知られる吉田拓巳氏が、今度は車内のディスプレーに店や商品などの情報が流すことにより、広告収入だけで運営する「無料タクシー」ベンチャーを立ち上げた、という報道です。

これがビジネスとして成り立つのであれば、面白いとは思いますが、広告へのエンゲージメントをどう高めるか、そして、どうやって効果測定するのかが広告収入において鍵を握るので、そこでの工夫が必要だと思います。

例えばですが、そのタクシーに乗っている間だけは、車内ディスプレーとスマフォの両方を使って暇つぶしゲームが出来るようになっていて、景品として、いろいろなお店の割引クーポンがもらえるようになっている、などです(暇つぶしゲームでエンゲージメントを高め割引クーポンで効果測定するという作戦)。

ちなみに、私であれば、自社で無料タクシービジネスを立ち上げるよりは、(無料にするほどの)高い広告収入をあげる仕組みをB2Bサービスとしてタクシー会社に提供するビジネスを選ぶと思います。その方が、スケーラビリティがあるし、ソフトウェア一本で勝負できるからです。

自分でタクシー会社を経営するには、固定資産を持たなければならないし、ドライバーも大勢雇わなければならないため、一気に立ち上げることが難しくなります。

「日本のカーナビ」はスマホに駆逐され滅びゆくしかないのか

日本では、世界に先駆けてカーナビが進化し、普及したため、世界的に起こっている(カーナビを飛び越して)スマートフォンがカーナビの役割を果たすという潮流に乗り遅れている、という記事です。

今の局面を捉える意味では正しい指摘なのですが、私は、カーナビの問題は一過性のものでしかなく、その先には、もっと大きな問題が自動車メーカーを待ち受けていると思います。

それは、すでにUberやLyftで始まっていますが、自動車が「持つもの」「運転するもの」から、単に「人やものを運ぶもの」に変わり、一般の消費者にとっては、カーナビそのものが不要になる時代の到来です。

ユーザーは、(すでにUberアプリでしているように)専用アプリで行き先を指定するだけです。すると、人が運転する車、もしくは自動運転車が近くまで迎えに来てくれて、指定した行き先まで連れて行ってくれるのです。

これこそが、MAAS(Mobility As A Service)の形であり、このサービスビジネスを運営し、消費者と直接やり取りをする会社が、利益の大半を持っていくようになる、それがこれからの自動車業界の形です。

なので、この記事で書かれているような、「車載機カーナビvs.スマホカーナビ」の戦いは、そんな時代が到来するまでの一過性の戦いでしかなく、今、自動車メーカーが力を入れるべきなのは、AIを駆使した自動運転技術と配車技術なのです。

自動車メーカーにとっての最大のライバルは、(Google Mapを持つ)GoogleでもAppleでもなく、UberでありWaymoなのです。ハードウェアだけを作る企業になってしまったら、パソコンや携帯電話のように必ずコモディティ化してしまいます。

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