結論から言います。上の画像は手と筆によって描かれた一枚の油絵です。
この作品を1年半かけて描きあげたという画家の三重野 慶(みえの・けい)さん(@mienokei)が10日、ツイッターで以下のつぶやきを投稿したところ、大きな反響を呼びました。
油絵だけど写真かと思われてスルーされるけど頑張っててえらい
1枚描くのにに月単位で時間かけて
前の大作は1年半かけて描いて
1枚1枚惰性で描かず目標決めて
適切な努力してえらい#油絵
#軽率に自分を褒めていく見た人もやる pic.twitter.com/VLBhxyoItu— 三重野 慶art@7.13-28東京 (@mienokei) 2018年5月10日
私たちは、自分の目で見たものを頭の中で思い浮かべるとき、目の前にあった姿のままであると思い込んでいます。しかし、まったく同じ姿や光景を別の人が目にしたとき、本当に自分と同じように見えていると断言できるでしょうか。
人の心にはさまざまな感情があり、生きてきた年数や環境の違い、あるいは感性とでも言うべき受け止め方の違いなど、例え同じ姿や光景を前にしたとしても、人の数だけ受け取り方があるのは当然のことだと思います。
上の画像が、油絵で描かれたものであるという事実を知ったとき、多くの人々はその高い描写力、技術力のみに心を奪われがちです。
しかし、作者の三重野さんが描きたかったのは、自身の脳内のフィルターを通して心の中で見えた姿や光景「そのまま」であり、「そのまま」の姿や光景を視覚化するにあたって、高い描写力を駆使した油絵という手法が最も適していたのではないでしょうか。
だから、ここに描かれているのは、「用意された写真を寸分違わず模写した油絵」ではなく、彼の心の中に映し出されたビジョン「そのもの」であり、彼はたまたまそれを一枚の油絵として定着させたのです。
おそらく、そこには自身の頭の中で解釈された「こういう形が良い」「こんな色の方が良い」「ああいった光の当たり方が良い」という、「本当の現物」とは異なる描写も含まれていることでしょう。実際に、三重野さんも自身の絵について以下のように答えています。
絵について書いた文章です。
個展で気づかずに読まれてない方、来れなかった方にも読んでもらいたいので載せます。良ければ読んでください。 pic.twitter.com/lmpCQkjemU— 三重野 慶art@7.13-28東京 (@mienokei) 2017年9月14日
私たちはこれらが油絵で描かれたものだということを知った後でも、彼の心の中「そのまま」を見せられているからこそ、無意識に心を揺さぶられてしまうのではないでしょうか。そして、次元を超えて、これらの作品群をいつまでもいつまでも見ていたいという気持ちに駆られてしまうのかもしれません。
(MAG2 NEWS編集部)
三重野 慶氏 展覧会情報:2018年7月13日〜28日、東京・茅場町「ギャラリー須知」(グループ展)
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