ゴルフ外交でトランプ大統領との親密度はアピールできたものの、その「成果」を巡り評価が分かれる日米首脳会談における安倍官邸の交渉能力。メルマガ『国際戦略コラム有料版』の著者・津田慶治さんは、「会談は大失敗」とした上でその原因について詳細に記すとともに、首脳同士の信頼関係も維持できない安倍総理に対して「首相失格」の烙印を押しています。
日米首脳会談は失敗
日米首脳会談は大失敗。トランプ大統領の取引きは、首脳間の信頼より重要であり、貿易黒字縮小策を持っていかないことで、日米FTAが決定し、北朝鮮での交渉でも日本の攻撃ができる中距離核ミサイルと核の廃絶には否定的になってしまった。この先、どうなりますか? それを検討しよう。
トランプ大統領の取引外交
トランプ大統領は、安倍首相に日米首脳会議のため訪米時、貿易赤字の縮小政策を示すことを要求していた。このため、日本は鉄・アルミ関税除外国にもしなかったのだ。日本より、貿易黒字が大きいドイツは、EU全体での対米対抗策を作り、米国と取引ができて関税除外国を勝ち取っている。
韓国は、防衛問題を出されて、譲歩して為替介入が出来なくなり、米車の輸入もほぼ無制限になってしまった。この米韓FTAの再交渉が上手くできたので、次は日本ということになっていた。
このような状況では、絶対に貿易黒字縮小策を持っていくことが必要であった。トランプ大統領は、信頼より取引である。このことを、日本のリーダーたちも肝に銘じる必要がある。同盟国であろうと、容赦はしないからだ。
それなのに、何の貿易黒字縮小策も持たずに、訪米してしまった。これは、非常に大きな判断ミスである。事前に、このコラムでは対応策を示したが、一連の不祥事の対策に追われて、何の検討もしなかったようである。
このため、首脳会議では何の成果もなく、ただ、北朝鮮に拉致問題を話すとトランプ大統領が言ったことが唯一の成果としているが、米国人で捕まっている人たちの交渉が先で、その解放後言うだけである。
また、ポンペオCIA長官訪朝の交渉結果は、ICBMの破棄と核実験場破棄はするが、今ある核は保持するということで核廃絶とは違い、今ある核は容認することになったようである。
ボルトン氏が主張するリビア方式核廃絶の合意は、米朝首脳会談に持ち越しとなったようである。核施設廃棄は可能性がまだある。この合意の目途が立たないとトランプ大統領は会談を行わない可能性もあるとした。中国にも合意できるように交渉しているようである。
しかし、これでは北朝鮮は中距離ミサイルと核を持ち、日本は北朝鮮の脅威を感じ続けることになる。米国としては、北朝鮮の脅威があるので、イージス・アシュアや敵地攻撃の巡航ミサイルが日本に売れることになり、米国としては満足な結果である。商売と軍事が一体になっていることを思い知らされる結果になった。取引であるから商売も防衛も一緒に考えているのである。
このため、小野寺防衛相は、核の完全な廃棄と中距離ミサイルの廃棄を主張している。これが本来の日本の要求であるが、日朝交渉を圧力を掛けながら先に行わなかった安倍政権の失敗により、米国の思い通りにされることになる。このコラムでは圧力を掛けながらの日朝交渉を行うことを主張したが、相手にされなかった。
日本は貿易黒字縮小策と引き換えに核廃絶の取引をしなかったことで、このような結果になってしまったのである。もう一度言うが、トランプ大統領は、信頼より取引である。
トランプ大統領の目標は11月までに、貿易赤字を縮小して成果を出すことに執着している。この執着を逆手に取る必要があるのに、安倍首相は、何も考えていない。これでは、内政のゴタゴタもあるが、首相失格である。首脳同士の信頼関係も維持できないことになり、首相を続けることが日本の国益ではなくなっている。