これまで様々な場所で幾度となく繰り広げられてきた「持ち家が得か、貸家が得か」という論争。どちらの論理展開にも頷けるところはあり判断に迷ってしまうのですが…、「持ち家のほうが得」と断言するのは、元国税調査官の大村大次郎さん。大村さんは自身のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』に、その納得の理由を記しています。
※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2018年4月16日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:大村大次郎(おおむら・おおじろう)
大阪府出身。10年間の国税局勤務の後、経理事務所などを経て経営コンサルタント、フリーライターに。主な著書に「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)「悪の会計学」(双葉社)がある。
貸家と持ち家論争の真実
家は買った方がいいか、借りた方がいいか、という論争はたびたび起きます。昔から、経済誌や週刊誌などで、「持ち家が得か、貸家が得か」ということが論じられてきました。戦前の雑誌でも、すでにこういう特集はたびたび組まれているのです。そして、そういう記事では「すべての経費を考慮すれば、貸家の方が割安になる」という結論になることが多いようです。
確かに賃貸と持ち家では、支出の面ではそれほど大きな差はないので、土地代の値下がりなどのリスクを考えた場合、「家を買ったほうが得」とはいえないかもしれません。しかし、この持ち家、貸家論争には、大きなポイントが二つ抜けています。
- 精神的な安定感
- 資産価値
です。
またそもそも家賃というのは、家を買うよりも割高に設定されています。家賃というのは、次の数式で算出されます。
- 家の購入費+諸経費+大家の利益=家賃
一方、家を買った場合、必要とされるお金は次の通りです。
- 家の購入費+諸経費
つまり、大家の利益の分だけ、家を買った方が得なのです。家賃を払っているということは、大家の利益をもずっと払っているという事なのです。もし、大家に利益がないのなら、誰も大家なんかしません。でも、これだけ賃貸住宅があるということは、大家というのは、それだけ旨みがあるということなのです。そして、その旨みを提供しているのは、賃貸住宅に住んでいる人たちなのです。
持ち家と借家では、トータルの住居費はほとんど変わらない、というような主張をされることもあります。そして“持ち家と借家では住居費は変わらない論”では、「持ち家の場合は、購入費自体は家賃より安いけれど、固定資産税やメンテナンス費用を入れれば、そう変わらない額になる」というようなこういう主張がされます。
しかし、この論には大きな欠陥があります。確かに、家を買えば、固定資産税やメンテナンス費用が必要となります。しかし、それは実は借家でもおなじことなのです。借家にも、固定資産税やメンテナンス費用はかかります。借家の固定資産税やメンテナンス費用は大家が払っていますが、しかし、それは家賃に上乗せされるので、結局払っているのは借主なのです。つまり、家賃と言うのは、固定資産税やメンテナンス費用も含まれているのです。
が、同じような間取りでも、「家賃」と「家の購入費」がそう変わらない、というような計算結果が出たりすることもあります。しかし、これにもカラクリがあります。同じような間取りであっても、借家と分譲住宅では、家の設備等が全然違うのです。賃貸アパート、賃貸マンションなどの場合、分譲住宅よりもかなり格安な設計になっています。つまりは、ボロいということなのです。
賃貸住宅の家賃は、購入費よりも安い(もしくは同じくらいの)ように見えますが、実は、賃貸住宅の方がボロイだけなのです。