与党の厳しい追求にも顔色一つ変えず官邸を守り抜き、財務省理財局長から国税庁長官に「栄転」した佐川宣寿氏。結局辞任ということになりましたが、その国税庁長官とはどのようなポストなのでしょうか。今回のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』では、自身も10年間の国税局勤務の経験がある著者の大村さんがその「正体」を記すとともに、財務省と国税庁の知られざる「呆れた関係性」を暴露しています。
※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2018年3月16日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:大村大次郎(おおむら・おおじろう)
大阪府出身。10年間の国税局勤務の後、経理事務所などを経て経営コンサルタント、フリーライターに。主な著書に「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)「悪の会計学」(双葉社)がある。
国税庁長官って何者?
森友学園の公文書書き換え問題で、ついに国税庁長官の佐川氏が辞任しましたね。それにしても、最近、ニュースでよく耳にする「国税庁長官」って、一体何者なのでしょう。財務省と国税庁は違う機関なのに、財務省の幹部だった人が国税庁長官になるのって、少し不思議ではありませんか? なんかその辺の人事関係、省庁の力関係というのは、一般の人にはなかなかわかりづらいですよね。なので、今回は、国税庁長官のポストとは何なのか、ということをご説明したいと思います。
国税庁は、建前の上では、財務省から独立した組織ということになっています。国税庁側は、「国税庁と財務省は、独立した緊張関係にあり、決して従属の関係ではない」などと言っています。しかし、これは単なる建前ですね。現実とは程遠い、きれいごとです。というのも、国税庁は実質的に財務省に支配されているのです。
国税庁は、国民に対して警察をしのぐほどの強大な権力を持っています。国税の職員は、税金に関することならば、国民のありとあらゆる事柄について調査する権利を持っています。国民には、それに対する拒否権がありません。見方によっては警察の捜査権よりも、国税庁の税務調査権の方が強力なのです。
国税庁は、そういう強力な権力を持っているわけですから、本来、ほかの省庁などに支配されず独立していなければなりません。そして、建前の上では、国税庁はほかのどこの省庁にも支配されない、ということになっています。
が、実際は残念ながら財務省に支配されているのです。それは、国税庁の幹部を見れば明白です。まず国税庁トップである国税庁長官のポスト、これは財務省のキャリア官僚の指定席なのです。そして、国税庁長官だけではなく、次長、課税部長も財務省キャリアの指定席です。国税庁長官、次長、課税部長の3職は、国税庁のナンバー3とされており、つまり、国税庁ナンバー3はいずれも、財務省のキャリアで占められているのです。他にも、強大な権力を持つ、調査査察部長や、東京、大阪、名古屋など主要国税局の局長も、財務省のキャリアが座っています。
国税庁にとって財務省はGHQのようなものなのです。この人事を見れば、国税庁が財務省の言いなりになっていることは、誰が見たって明白です。国税庁長官というのは、会社で言えば、「社長」である。社長の言うことに逆らえる社員などはいないはずです。普通の会社であれば、社長の次の権力者などが派閥をつくって、社長派と反社長派などが拮抗するというようなことも、稀にはあります。しかし、国税庁の場合は、社長だけではなく、トップ3が押さえられているのです。これだと、国税庁が財務省に刃向うことなど、絶対にできないはずです。
また現場にいた筆者なども、財務省のキャリア官僚というのは、神のような存在であり、逆らうことなどありえない絶対的な支配者であったことを肌身で知っています。つまり、国税庁は財務省の絶対服従の子分なのです。