金正恩の本音は?
金正恩の提案、実は「プーチン案」と同じです。それは、
- 北朝鮮は、核兵器を放棄する
- アメリカは、北朝鮮の体制を保証する
- 中国、ロシア、国連は、この合意が実施されることを監視し、保証する
このプーチン案は、現実化されれば、すべての国に恩恵をもたらします。なぜ?
- 日本、アメリカ、韓国は、北の核の脅威がなくなり幸せ
- 北は、金王朝存続を認められて幸せ
- 中国、ロシアは、「緩衝国家=北朝鮮」が存続して幸せ
では、なぜ「すべての国にとってよい」プーチン案は採用されないのでしょうか?
03年、リビアのカダフィは、「核開発放棄」を宣言しました。それで欧米とリビアの関係は、劇的に良くなった。しかし、米英仏は2011年、リビアを攻撃。結局カダフィは、殺されました。こういう経緯があるので、金正恩は、アメリカを信用できない。
一方でアメリカも、「北は支援を受けながら、核開発を続けてきた。だまされた!」と憤っている。結局、アメリカと北朝鮮の相互不信が強すぎて、なかなか進展しないのです。
私は、金正恩が、「命綱」の核兵器を放棄することはありえないだろうと思います。では、なぜ金は「非核化の準備がある」とか「アメリカと対話したい」と言うのでしょうか?
考えられるのは、「時間稼ぎ」です。思い出してみましょう。金は1月1日、「米本土を核攻撃できるICBMは完成している。実戦配備を命じた」と声明を出しました。これ、アメリカ国防総省や情報機関は、「北は、まだ米本土を核攻撃できないが、年内に可能になる可能性がある」としている。それが本当なら、金は「開発のための時間稼ぎ」が必要になります。
もう一つの可能性は、「制裁でかなり苦しくなってきている」。北朝鮮は、国連安保理の決議をバンバン破って、核実験、ICBM実験を続けてきた。「緩衝国家」を維持したい中国、ロシアは、北を守っていますが、世界を敵にすることもできないので、制裁は徐々に強化されてきている。苦しくなったので、「対話して制裁を緩和させよう」としている?
もう一つの可能性は、「プーチンがアドバイス」した? 思い出してみましょう。2013年8月、オバマは、「化学兵器使用」を理由にシリア・アサドを攻撃しようとしました。この時、プーチンが仲介に入り、「化学兵器を放棄するから、戦争はするな」と説得した。結果、アメリカのシリア・アサド攻撃はなくなり、アサドは生き残っている。それどころか、反アサド派、ISをほぼ駆逐し、シリアの大半を支配するに至っている。
プーチン・ロシアが、そんな例を出して、「俺たちが守ってやるから、安心しろ」とアドバイスしたのかもしれません。あくまで想像ですが。