ここに来て、森友問題を巡る大量の内部文書が公表されています。昨年、国会において「森友学園にかかる交渉記録はすべて破棄した」と言い張り続けた当時の理財局長・佐川宣寿現国税長官の発言が偽りだったことが事実上証明されたにも関わらず、同問題の真相解明のため野党が求める佐川国税長官の国会招致を拒否し続ける政府与党。一体何を隠し、誰をかばおうとしているのでしょうか。メルマガ『国家権力&メディア一刀両断』の著者で元全国紙社会部記者の新 恭さんがこれまでの経緯を振り返りつつ、その真相に迫ります。
事実上、佐川長官のウソを認めた財務省
森友問題に関する近畿財務局の内部文書が次々に公表されている。いずれも、担当部課からの相談内容と、それに法務部門が回答した記録だ。
いまになって開示の動きが出てきたのは、市民団体の情報開示請求の仕方が上手だったからということに尽きる。「廃棄されたというのなら交渉記録でなくてもいい。周辺の森友関連文書を」。そんな趣旨の請求だった。
担当部課は頭を抱えたかもしれない。法律の相談記録は5年間保存する決まりだ。かりに交渉や面談の記録なら廃棄したと言い張ることができるとしても、これについて無いといえば、完全なウソになる。財務局は文書を出さないわけにいかなくなった。
市民団体とほぼ同時に開示請求していた毎日新聞も文書を入手した。こちらは「面談・交渉に関する文書」を請求していたが、市民団体とほぼ同様のものが出てきた。市民団体に開示した以上、拒否しても意味はないということだろう。
だが、文書の種類は「法令照会」であっても、法的に問題がないかどうか、どう対処すべきかを問うものであり、面談・交渉の経過を説明しないわけにはいかない。
事実、どの質問文書にも
- 事案の概要
- 経緯
- 学校法人側の主張
- 事実関係
というかたちで、それまでの経過がまとめられている。
「交渉記録はすべて破棄した」とひたすら強弁を続けた佐川宣寿前理財局長(現・国税庁長官)の発言がウソだったことを、財務省は文書開示によって事実上認めたことになる。
太田理財局長は「交渉記録とは全く別物」と表面上、佐川氏を庇っているが、今回の情報開示で佐川氏が追い詰められることになったのは間違いない。栄転した前任者の尻拭いをさせられる太田局長の心中は複雑であろう。
こうなると、国会も黙ってはいない。当然、文書を全て出せと強い要求が出てくる。
財務省は1月の5件の文書に続き、2月9日、新たに「法令照会」「回答」文書20件、計約300ページを国会に提出した。2013年9月10日から16年5月19日までのものだ。
このうち16年3月31日と5月19日の記録が、国有地たたき売りの真相を知るうえで興味深い。
居丈高に昭恵夫人の名を持ち出す籠池理事長夫妻をどう納得させるか。学園側の金銭負担軽減に協力しなければ、小学校は開校できない。国側の涙ぐましい対応がお役所文書の行間に滲む。