中国といえば、年長者や目上の方を敬い徳に沿って生きる「儒教の国」というイメージを抱く方も多いかと思いますが、なんととうの昔に彼らは孔子を捨ててしまっているそうです。今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』では編集長の柴田忠男さんが、「儒教を文化のベースに持っている中国」という認識がいかに誤っているかを記した一冊を紹介しています。
『孔子を捨てた国 現代版中国残酷物語~』
福島香織・著 飛鳥新社
福島香織『孔子を捨てた国 現代版中国残酷物語』を読んだ。わずか半世紀前の文化大革命期に徹底的に否定した儒教を、今は共産党中国の根本思想のように持ち上げる滑稽さには呆れ果てる。為政者の権力闘争のたびに、価値観も善悪もひっくり返る国家に、信じられるものは何もない。
実は中国人はとうに孔子を捨てている。昨今の儒教ブームは政治現象に過ぎない。建前と現実は乖離している国で、保身のため政権のスローガンに合わせた口パクに過ぎない。もはや「儒教を文化のベースに持っている中国」という認識は間違いだ。日本人的な甘ったるい善意や真心は通用しなくなっているのだ。
中国とは個人レベルでは通じることもあるが、国家レベルとなると恫喝、挑発、牽制によって日本の油断を突く「厚黒(腹黒で図太く生き抜く)」そのものだ。この本では、中国の社会システムの残酷さ、政治の残酷さ、近代史の残酷さを具体的に描いている。中国に生まれなくてよかったと、心底思うのであった。
他人が信じられない中国人にとって最も頼りになるのが身内、血族である。ところが、一人っ子政策という愚かな人口抑制政策によって、この伝統的家族観に歪みが出てきた。少子高齢化が進み、子供が成人したときに支えなければならない家族の数が増え、その責任と義務のプレッシャーが重くのしかかる。
バブル華やかだった頃に働き盛りだった親から、分不相応な贅沢を許されて育った一人っ子が、いざ就職して自立しようとすると、経済は急減速で、自分が望むような条件の就職先がない。忍耐や努力を知らない彼らは、開き直って堂々と親のすねを囓り続け、拒否すれば時に暴力をふるい、殺人も犯す。