昨年末のマイナーチェンジ後も順調な売れ行きを誇るトヨタのミニバン、アルファードとヴェルファイア。独特のフロントマスクは賛否両論を呼んでいますが…、無料メルマガ『週刊くるまーと ~賢く選んで、楽しく運転~』の著者・すぎもとたかよしさんは、両車についてどのような見解をお持ちなのでしょうか。
新車心象風景:トヨタ・アルファード/ヴェルファイア
うーん、言葉もないといった感じだろうか。
標準に対してのカスタムバージョンはいまやすっかり定着して、軽をはじめとするミニバンでは必須の商品展開だ。
僕はこのカスタム版をコラムで扱うとき、これを好んで買うユーザー側の残念な感性についてを書いてきた。日本に浸透するヤンキー文化が、標準車よりカスタムを人気にするような市場を作ると。
売れるから作るのか、作るから売れるのか。すでにどちらとも言える状況だけど、しかし、マイナーチェンジされたアルファードとベルファイアは、明らかにトヨタの暴走なんである。
Lクラスミニバンとして、もともと異様にデカい顔。これをキャンバスと考えれば何だって描ける。じゃあということで、デザイナーが好き放題描いた結果、何と2車ともがカスタムになってしまった。
それにしても、ランプから下る数十センチものモールや、バンパー両端の巨大なインテーク枠など、長大なメッキパーツをスケッチしたそのデザイナーや主査は、いったいどういう心持ちだったんだろう。
日本トップ企業の商品としての品格欠如、多くの台数が街を走ることでの風景破壊なんて認識はたぶんない。それより「ここまでやっちゃえば皆驚くぞ」「ドカンと売れるぞ」といったところか。
売れることが正義か否かはともかく、組織力、開発力、調査力等々について「やっぱりトヨタはすごい」と常々評される。この巨大企業が持つポテンシャルについて、僕も否定するつもりはない。
けれども、自国市場への商品展開を見たとき、果たして見識や良心、あるいは感性に手放しの評価ができるかといえば、それは決してない。2018年を迎えたいまでさえ「売れればいい」という魂胆が見え隠れする。
少なくとも僕は、このアルファードとベルファイアを見せられれば、トヨタはもうJPN TAXIとセンチュリーだけ作っていればいいんじゃないか、と思うんである。
すぎもとたかよし
image by: TOYOTA / トヨタ自動車株式会社 - Home | Facebook