ここで、一つの問題点が明らかになった。内閣法制局の見解を立憲民主党側が気にして、原発ゼロの年限など具体的数字を明記するのをためらっているということだ。
その問答を再現してみよう。
河合弁護士「われわれの法案では自然エネルギーの割合を2030年50% 2050年100%とした。今日配られた立憲民主党のペーパーでは『(原発ゼロ)一日も早い実現』『再稼働は原則として認めない』『再生可能エネルギー100%の電力供給をめざし』となっている。もっと具体的に数字等を明示していくべきだ」
逢坂議員(立憲民主党)「目標を具体的に書く方向で法案ができないかと思っている。ただ法文上、整合性のとれたことが書けるのかどうか、立法技術の問題だが、もう少し工夫がいる」
河合「なぜ条文上、立法上、難しいことがあるのかが、理解できない」
逢坂「内閣法制局的に言うと、電力会社が今、原子力発電所を自由な経済活動のなかで自主的にやっている。それを法律でいっきに止められるのか、そうなると憲法問題になるのじゃないのか、というのが法制局の言い分なんですよ。そこなんです」
河合「正当な補償をすれば財産権というのは収用できる。それが憲法の大原則。憲法問題だからいじれないわけではない。法制局独特の屁理屈だ。1、2兆円補償するからやめなさいと言って、国民で負担すればいい。原発のコストに比べれば安いものだ」
先述したように、政府はエネルギー基本計画の2030年原発比率20~22%という目標を達成するため、基本計画に原発新設を書き入れる筋書きを描き、いよいよ計画見直しを審議する有識者会議とタッグを組んで、コトを進め始めた。小泉氏らの動きをにらみ、政府が先手を打っていこうという意図も感じられる。
有識者会議の委員長がコマツ相談役、坂根正弘氏で、彼の発言を聞いていると、経産省の仕掛けがよくわかる。
昨年11月の総合資源エネルギー調査会基本政策分科会。坂根氏の分科会長としての締めくくり発言は、その後の議論の方向性を決める内容を含んでいた。
私は原発比率50%と言われたCOP15から5回連続で地球温暖化会議に出たが、全く納得いかないのが、あのころ、経済成長よりCO2だと言っていた環境派の人たちが、いま原子力についてのコメントを一切言わない。これはおかしいと思う。
福島の原発事故以降、危険性ばかりがクローズアップされてきたが、環境問題に原発が寄与するという意見はどこへ行ったのかという主張だ。
主な先進国の中ではドイツだけが原発をやめたうえで達成すると言っている。地球温暖化会議に出て感じるのは、ドイツは極めて自分に都合のよい言い分で、あるときはEU全体、あるときは自分の国に都合のいいようにしゃべっている。
2022年までに原発稼動を完全に停止する計画のドイツについて、坂根氏はこのようにこきおろした。要するに、経産省・資源エネルギー庁との打ち合わせ通り、CO2削減の観点から原発を推進すべしという線を打ち出したということであろう。