未だ収束の見通しが立たない福島第一原発事故から7年が経とうとしていますが、この春にも経産省の有識者会議によるエネルギー基本計画の改定案がまとまる見通しです。メルマガ『国家権力&メディア一刀両断』の著者で元全国紙社会部記者の新 恭さんによれば、その狙いは「原発の新設、建て替えを計画に盛り込むこと」とのこと。新さんは今回の記事中、国会への「原発ゼロ法案」の提出を目指す小泉・細川両元総理や立憲民主党の動きを紹介しながら安倍官邸のエネルギー政策を批判するとともに、脱原発の可能性を探っています。
原発ゼロか新設か、国民は選択を迫られる
安倍政権で原発ゼロは難しい。原発への依存度を低くするという公約の逆のことをやっている。よく恥ずかしくないな。あきれるよ。
超党派で原発ゼロ法案の国会提出をと呼びかける小泉純一郎元首相は、1月10日、安倍政権のエネルギー政策について激しい言葉で批判した。
昨年夏以降、経産省はエネルギー基本計画の見直しにとりかかった。狙いは原発の新設、建て替えを計画に盛り込むことだ。再稼働できても、いずれ原子炉の寿命は尽きる。新たに造らない限り、この国の電源から原発はなくなる。
現在、日本の全電源のうち、原子力発電の占める割合はわずか2%ていど。それを、2030年に20~22%まで復活させるというのが政府のエネルギー計画だ。
全国43基のうち稼働中なのは、川内原発1、2号機と高浜原発3、4号機の4基のみ。福島の原発事故以降、全ての原発がストップした期間もトータルで2年をこえる。ゼロから数%の原子力発電でも、ずっとこの国の電力は足りてきた。危険な原発をあえて動かす合理的理由などない。
ましてや、建設候補地の自治体と住民の反対が避けられないのに、新たに原発をつくるなどという非現実的な見直しを、なぜいま、やろうとするのか。
そもそも、安全対策で原発建設そのものにかかるコストが増大している。メーカーも金融機関も、政府保証、つまり国民への責任転嫁の確約がとれなければ、動かないだろう。
無理なエネルギー政策に執着しているのが、今の安倍政権の姿だ。かつては脱原発を唱えると、非現実的と言われた。CO2削減に原発が欠かせないという刷り込みもいまだに行われている。
だが重ねて強調したいのは、いまや原発依存こそが非現実的ということだ。CO2排出削減には、太陽光、風力、地熱、水力など、ホンモノのクリーンエネルギーこそがふさわしい。
その装置やシステムにかかるコストもここ数年で急速に下がっている。今後はさらに安価になっていくだろう。原発推進派から「不安定な電源」と言われ続けていた太陽光や風力発電も、ITや蓄電システムの発達で問題は解消している。
太陽光や風など地球上どこにでも存在するエネルギー資源を活用できれば人類にとってハッピーである。それが可能な時代になっているのだ。