米国も対話に踏み出している
この日経記事が「日米が不安を募らせる」という場合の「日」は、安倍・官邸・外務省・読売・日経などだろう。しかし「米」とは誰のことなのか。トランプは上掲のように対話を大歓迎している。それが決してその場の思いつきでなく、ティラーソン国務長官が周到に進めてきた米朝の直接対話を通じてのそれなり感触に基づくものであることは、1月4日付産経の「米朝が12月に北京で極秘協議、米の対北融和派巻き返しか?」という記事を見れば分かる。
北朝鮮の核・ミサイル開発をめぐり、米政府関係者と北朝鮮当局者が昨年12月上旬に北京で極秘協議を行っていたことが3日、分かった。同じ時期にカナダ政府が日本政府に「対北圧力」方針の見直しを迫っていたことも判明した。一連の動きの直後、ティラーソン米国務長官は北朝鮮との無条件対話に応じる考えを表明。トランプ政権内で対北融和派が巻き返しを図っているとみられる。複数の政府筋が明らかにした。
北朝鮮との極秘協議を主導したのは米国務省情報調査局のジョン・メリル=元北東アジア室長。「トラック1.5」と呼ばれる官民合同の意見交換会の形をとったとされる。北朝鮮側の出席者ははっきりしないが、対話の再開条件や枠組みなどについても協議したとみられる。
直後の12月12日にティラーソンは講演で「前提条件なしで北朝鮮との最初の会議を開く用意がある」と発言した。メリルらの報告を踏まえ、対話再開に向けたシグナルを北朝鮮側に送った可能性もある。
米朝間では、米国務省のジョセフ・ユン北朝鮮担当特別代表と北朝鮮外務省の崔善姫米州局長も度々接触しているとされる……。
このように、米国はとっくに北との対話に向かって動いており、今回の南北高官級会談の開催という新展開も、米韓中露さらにカナダも含む国際的な対話醸成努力の成果と見ることもできる。そうしてみると、米国を盟主と崇めてその斜め後ろに控えて、韓国を叱咤激励しつつ北に対する国際包囲網を作り上げているというのは、日本だけが思い描いている虚像で、実は朝鮮半島問題の対話による解決のための国際的包囲網が作られつつあって、そこで包囲されているのは唯一人、対話を拒否している日本なのである。
そのように自分の姿を客観視できない「裸の王様」状態に陥るのは、米日韓同盟で朝中露に立ち向かうという、20世紀的な冷戦発想からどうしても抜けられない時代錯誤の故である。この政府・外務省・マスコミの病は深い。
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