黄色は進めの大阪府民、ウインカーを出さない福岡県民、車間距離狭すぎの千葉県民など、真偽のほどは別として、ネットでは地域別の「運転マナー」が面白半分で紹介されていますが、これを外国にまで目を向けると、さらに驚愕するローカルルールが存在するようです。メルマガ『しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」』の著者でNY在住の医学博士・しんコロさんが、米国内でのトンデモない事例を紹介しています。
※本記事は有料メルマガ『しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」』2017年11月28日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:しんコロ
ねこブロガー/ダンスインストラクター/起業家/医学博士。神奈川県生まれ。ニューヨーク在住。環境科学の修士号を取得後渡米、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)、ドイツキール大学での客員研究員を経て、免疫学の博士号(Ph.D.)をワシントン大学にて取得。現在、世界有数のがん研究所として知られるニューヨークのメモリアル・スローンケタリング・がんセンター勤務。研究者としての仕事の傍ら、ヒップホップダンスインストラクターを兼ね、レシピやエッセイなどの執筆なども行っている。著書に「しゃべるねこ、しおちゃんと僕」等がある。
運転免許と心の準備
もう数年前になりますが、日本に帰国した時に運転免許の更新をしたエピソードをメルマガで書きました(バックナンバーVol.042)。あれは2014年の話でした。
その時は神奈川県二俣川の運転試験場に免許の更新に向かったのでした。更新期限にアメリカにいたので一度失効していましたが、パスポートを見せて日本にいなかったことを証明すれば問題なく更新できます。ところが、一旦失効しているために、違反者扱いと同じ2時間の講習を受けることになってしまうのでした。こうして必要以上の時間を使って日本の免許更新をしたわけですが、日本の良い所は更新手続きをしたらちゃんと更新されてその日に免許が交付されることです。
これがアメリカ(特にNY)だと、何らかの手違いがあって交付されないとか、更新手続きが滞って意味もなく失効するだとか、交付したけど郵便が届かないとか、発送はされたけど間違った住所に送られてしまうとか、何らかのミスが起きるものです。日本はそういった間違いがほとんどないのは素晴らしいです。皆さんからしたら「あたりまえ」のことが、別の国に行くと当たり前ではなくなるのです。こちらではむしろ、「間違えるのがあたりまえ」なので、「苦情を言う準備をしているのも当たり前」なのです。
そう聞くと、アメリカ人はいつも苦情を言ってプンプンしているのかと思われるかもしれませんが、一部のNYカーは別として必ずしもそんなことはありません。むしろ、アメリカ人は「怒らずに苦情を言うのが上手」な一面があります。日常生活にあまりにもミスや不具合が生じるので、その度に怒っていたらストレスが溜まりますよね。なので、怒らずに苦情を言うという術をアメリカ人は自然と学んでいるのかもしれません。それと関連して、先日レストランで頼んだサラダが腐っていたのとツイートしましたが、皆さんから様々な反応がありました。
「NY ではあるある」のようなことをツイートしたので、僕がガマンをして腐ったサラダを食べたように誤解した人も多かったようですが、もちろん食べていませんし、ガマンもしていません。怒ることもせず店員に状況を伝えて、そのサラダを下げてもらい代金も引いてもらいました。もちろん、これが高級レストランだと怒る気持ちは湧いてくると思います。それはやはり期待があるからですね。日本では高級レストランではなくても「ちゃんと仕事をするだろう」という期待があるので、その期待を裏切られると怒る気持ちが湧くのかもしれません。NYではあらゆることに期待度が低いので、怒る気持ちも湧いてこないのかもしれません(笑)。
さて、僕も今月に誕生日を迎えますが、その日にシアトルから持ってきたワシントン州の運転免許の有効期限が切れます。切れる前にNYの免許に更新をしなければなりませんが、なかなか重い腰が持ち上がりません。別に僕が太ってお尻が大きくなったわけではなく、気持ちが乗らないのです。なぜなら、免許の更新をするために役所でえらく待たされて、結局むこうのミスで更新ができなかった、というようなことが起きうる心の準備をしなければならないからです。その心の準備に結構エネルギーを要します。日本の皆さんにはきっと想像もできない種類の心の準備です。想像してください、例えてみたら、焼肉屋に言ってめちゃくちゃ焼肉モードになっていたのに、肉を置いていないと言われるような理不尽な感じです。
そういえば、数年前に「寿司・酒バー」と店名にあるのに、お酒類を一切置いてない店がありました。「うちは酒はない、近所の酒屋で自分で買ってきて」と指示されて店を飛び出して買いに走ったものでした。というのも、その店は90分で蹴り出されるシステムなので、急いで買って帰らないと食べる時間がなくなるからです。店名は「楽し・すし・酒バー」なのですが、焦って酒を買いに行った僕の心はちっとも「楽し」ではありませんでした(笑)。例えが長くなりましたが、それくらい期待と予想を裏切られる心の準備をしなければならないということです。
ちなみに、運転免許を扱う役所の受付がいかに仕事が遅いかを、的確にしかも面白く描いた動物アニメーション映画「ズートピア」があります。受付の男性がナマケモノという設定です。英語ですが内容は分かるので、是非見てみてください。アメリカで免許手続きをした人は「わかるぅ~!」となる描写ですが、日本の人が見てもクスっとなることうけあいです。