かつては男の子の憧れの職業でもあった航空機の「パイロット」。しかし近年、LCCの台頭や便数の急激な増加で彼らの置かれている状況が激変しているようです。現在、パイロットの人手不足で欠航が相次ぐ航空会社が社会問題化しているそうですが、一体何が起きているのでしょうか。米国育ちで元ANA国際線CAという経歴を持つ健康社会学者の河合薫さんが、自身のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』で、パイロット不足の現状と今後行うべき対策について詳しく解説しています。
※本記事は有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』2017年12月6日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。
パイロットが足りない!
パイロット不足による欠航が相次いでいます。
11月にはエアDOが、新千歳─羽田間と新千歳─仙台間で計34便(17往復)を運休。
これまでにもピーチ・アビエーション、バニラエアが「パイロットが足りない」「パイロットが病欠」等の理由で、運航を取りやめてきました。
欧州ではLCC最大手のライアンエアが11月から来年3月で、計1万8000便を運休するなど、世界中の航空会社、とりわけLCCでパイロットが確保できていません。
先日、アメリカン航空で「クリスマスシーズンに1万5000便が飛べない!」というニュースが入ってきましたが、こちらは「システムがサンタクロースになって、『みんな、休暇が欲しいかい? オーケー、全員にあげるよ』と言ってしまった」
ことが理由です。
「“人員余剰”と勘違いしたコンピューターが休暇を大判振舞いした」とはずいぶんお粗末ですが、慢性的にパイロット不足にあることに変わりありません。
現在、「時給を1.5倍にするから休暇を返上してくれ!」とお願いしているようですが、「もっとくれないとムリ」と組合は反発してますし、株価も急落してますし、アメリカン航空……、ヤバいですね。
いずれにせよ、世界中でパイロットが大量に不足していて、年々深刻さが増しています。
ICAO(国際民間航空機関)の予測データによれば、2010年の段階で全世界で46万人であったパイロットが、30年にはおよそ2倍の98万人にまで必要になるとされていました。とりわけアジア太平洋地域は深刻です。
10年段階で5万人しかいないアジアのパイロット需要が、4.5 倍に増えるとされているのです。
これらは「2030年問題」と呼ばれていました。
“呼ばれてた”と過去形なのは、8月で変わったからです。
なんとパイロット問題が10年繰り上げられ「2020年」になった。
「あと3年後の2020年に、世界中でパイロットが絶対的に足りなくなる!」のです。