我が国を代表する企業のひとつ、神戸製鋼所による品質データ改ざん問題。8月の判明以来次々と明るみになる「不正」に、国内外が騒然となりました。メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では著者で世界の鉄道事情にも精通する作家の冷泉さんが、この問題の「被害者」でもあるJR東海が取った対応を紹介するとともにその毅然とした姿勢を高く評価、さらに同社の判断が全世界の被害を受けたメーカーやユーザー、そしてメディアに対して発信したと思われるメッセージを読み解いています。
神戸製鋼問題と新幹線車両を考える
神戸製鋼による納入した製品に関する「品質データの改ざん」という問題は、日本の製造業の国際的信頼を傷つける大きな問題になっています。ちなみに、この事件を日産やスバルの「無資格検査」と並べて批判している記事をよく見かけますが、深刻度のレベルが100倍あるいは1,000倍は違う問題です。
日産やスバルの問題は、センサーなどで高度の品質管理を行って製造された車両を、「日本の公道を走らせる」ためには産業振興とは関係のない「国交省」という役所が指導する旧態依然とした「完成検査」というコストのかかる儀式を経なくてはいけないという、いわば「国内向けにも適用される非関税障壁」です。岩盤規制反対などと言っている人々が、この点を問題視しないのはおかしいと思います。
ですが、これとは違って神戸製鋼の問題は深刻です。納入先に対して商談で合意したスペックに達していない製品を作っておいて、データだけ偽造していたのですから深刻というより悪質です。