誰もが知る大企業でもフタを開いてみれば上層部は無責任でいい加減な人ばかり、というのはよくある話。現場で実際に頑張っているのは平社員ばかりというケースは意外と多いのではないでしょうか。メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』の著者にして米国育ちの元ANA国際線CA、元お天気キャスターという異例のキャリアを持つ健康社会学者の河合薫さんが、大手日本企業の中間管理職に関する興味深い調査結果をご紹介しています。
無責任な上司がはびこるわけ
前回のメルマガで「日本の大企業の中間管理職がどんな人たちなのか?」
「わが国大企業の中間管理職とその昇進」と題された論文の肝であり、もっとも気になるのは35項目の心理特性と昇進との関連です。
統計的な分析を行なったところ次のことがわかりました。
昇進には……
- 学歴、及び、早い時期での評価が圧倒的に重要
- 交渉力、運への自信、指導力、昇進意欲などが重要
- 忠誠心、明るさは関係ない
さらに、
- 責任感や几帳面さは、昇進にマイナスに作用する
と、35項目の中で、「責任感」と「几帳面さ」だけが、統計的に有意に昇進のマイナスに作用していました。
要するに、「責任感の強いことは、昇進を妨げる可能性が高い」という、なんとも残念な結果が得られているのです。
責任感の強さがなぜ、マイナスに作用するのか?
その理由とされているのが、正義感です。
責任感の高い人は正義感も強いため、自らの責任に加え、他者への責任追及も厳しい。
組織でおこる問題の多くは、たったひとりの人物が原因である場合はごくまれ。
ひとりが正直に告白することで困る人も少なからずおり、厄介な存在なのです。
逆に、嘘をつきとおす人のおかげで責任追求を免れる人も存在します。
つまり、多かれ少なかれ日常の業務の中にも嘘や責任逃れは横行しているので、そういう人は案外、上司や周囲から重宝がられ、上からの「引き」で出世する可能性が高まるのです。