山の宿の楽しみの一つが山の幸。きのこや山菜なども美味しいものですが、やはり普段あまり口にしない川魚は必ず食べたいですよね。しかしメルマガ『『温泉失格』著者がホンネを明かす~飯塚玲児の“一湯”両断!』の著者で元大手旅行雑誌編集長の飯塚さんによれば、近くの川で獲れた川魚を提供している宿はほぼ皆無とのこと。私たちが山の宿で口にする川魚の衝撃の実態とは?
山の湯宿の夕食、”山川の幸”の実態
リニューアルで何を取り上げようか悩ましいところなのだが、今回は表題の件について書いてみたい(本当は草津の某有名宿のことを書こうかと思ったのだが、もう少し、先に延ばしたいと思う)。
さて、山あいの温泉に行って、色の変わったマグロやら、明らかにというか、100%養殖のハマチの刺し身などが出るとげんなりするものだ。
なぜ山の宿でもマグロが出るか、ということについては、過去のメルマガでも取り上げた。 バックナンバーを探せば出てくるので(確か「赤い刺し身」とかいうようなタイトルで書いたと思う)、ご一読いただきたい。
で、今回はそうではなく、山の宿でイワナやヤマメ、ニジマスや鮎の料理が出てくるような温泉宿のことに付いて書こうと思う。
いきなりがっくりさせるような話で恐縮なのだが、山の宿でこれらの魚が出てきた場合、それが近くの川で穫れたものである可能性は、ほぼゼロに等しい。
言い方を変えれば、近くの川の水で育った魚である可能性は高い、と言える。
どう違うのか、と言えば、「天然魚」なのか「養殖魚」なのか、ということ。
つまり、これら宿で供される魚は、ま、99%が養殖魚なのである。
ニジマスの場合は、100%養殖であると思っていい。 というのも、天然のニジマスはあまりにも希少で、安定的に夕食メニューに載ることはないからである。 イワナやヤマメもしかり。 天然のこれらの魚の漁獲高は、おそらく地元に行ってもほとんどゼロに等しいだろう。
大きな理由として、まず漁獲の方法としては、ほとんど釣りしかない。
そうすると、仕事として成り立つことが、もはやないからだ。 さらに、魚の大きさがバラバラである。 そうなると、宿の食事として出すには問題だ。
なにしろ釣れないからね。 毎日30尾釣って型をそろえて持ってくるような職業釣り師は、昔は存在したのだけども、今は養殖物のほうが安定していて安いから、そちらを使う。 お客様の期待を裏切らないためには仕方がない。
川で釣れるニジマスのほとんどが天然魚であるのは、おそらく北海道だけである。 それでも、そのニジマスを安定して供給するとなると、なかなかに難しく、しかも大自然のなかでがんばって生き抜いてきたニジマスを大量に捕獲して食べる、ということを、北海道の人は絶対に好まない。
イワナやヤマメに関しても、釣りを含めて漁獲が可能な時期はおおむね3月から9月に限定されているのが実情である。 これは各県の内水面漁連などで決まっていて、その上、県の条例でも限定されていることがほとんどだ。
すると、冬に出てくるイワナやヤマメはほぼ100%養殖物ということになる。
ニジマスに関しては通年大丈夫のところも多いが、実態は養殖魚を放流して釣らせているだけで、釣り堀みたいなものである。