テレビ番組で識者やコメンテーターが連日「分析・解説ショー」を繰り広げている、衆院選の自民党圧勝劇と希望の党の惨敗劇。しかし、小池百合子氏が「小泉(純一郎との密談)にはじまり、進次郎に終わった」と言えるほど、最後は「小池 vs 小泉進次郎」という、自民党が作り上げた構図に悪乗りしたテレビ報道こそが同党に大勝利にもたらしたようです。メルマガ『国家権力&メディア一刀両断』の著者で元全国紙の社会部記者だった新 恭(あらた・きょう)さんは、こうしたテレビ報道に対して批判的な論を展開しています。
メディアは自民党の進次郎イメージ戦略に悪乗りし過ぎ
立憲民主党の枝野旋風が駆け抜けた斬新さはあったものの、とどのつまり自民党が総選挙に圧勝し、「安倍一強」のどんよりした政治風景が続きそうである。
追い込まれていたはずの安倍自民党がなぜ、これほどまで議席を獲得できたのか。野党陣営の分裂とか、オウンゴールとかいう見方は当然あるだろう。小池百合子氏のいわゆる「排除」の論理で、追い風が一転、逆風に変わったのも事実だろう。
だが、自民党が繰り出した「奥の手」を見逃すわけにはいかない。巧みなイメージ戦術を仕掛け、まんまとテレビ各局がそれに乗ったのである。
「小池百合子vs安倍晋三」ではなく、「小池百合子vs小泉進次郎」の構図をつくりあげたのだ。むろん視聴率競争というテレビ業界の構造が巧みに利用されたといえる。
東京都議選における安倍総理演説の失敗。聴衆の「安倍辞めろ」「安倍帰れ」コールに対し、キレやすい安倍首相が「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と叫んだことがメディアの餌食になり、大敗につながった。
その教訓から自民党本部の広報宣伝部門は、総選挙において、安倍色を薄め、別のカラーに塗り替える作戦を立てた。言うまでもない。「小泉進次郎」という色だ。
愛嬌、弁舌申し分ない自民党のスターを選挙の顔にし、適度な自党批判もまじえて自由闊達に発言させ、自民党の人材の多様性をアピールする。その一方で、安倍首相には「北朝鮮危機」「経済政策の成果」PRなど、決められたセリフと「ご当地用」のお世辞ていどに発言を限定してもらう。
いかに子供じみたところがあるとはいえ、一時は土壇場に立たされ、田原総一朗氏に打開策の指南を仰いだ安倍首相である。選挙に勝つためなら、自分が主役でなくてもいい。そう思うくらいの度量は持ちあわせているだろう。
自民党は公示直前まで安倍首相の街頭演説のスケジュールを事前に公開しなかった。知らせれば「安倍辞めろ」コールをする人々が集まってくる。安倍首相が癇癪を起こせば、都議選の二の舞になるかもしれない。そんな恐れからだ。
首相の演説日程を秘密にするなどということは前代未聞である。当然、記者クラブは自民党本部に抗議した。すると自民党は渋々、公示日の10日のスケジュールから公表し始めた。