メルマガ『ジャンクハンター吉田の疑問だらけの道路交通法』の著者で交通ジャーナリストの吉田武さんが、現役の警察官であるTさんへのインタビューで「自転車の取り締まり」に関する裏話を暴露する当シリーズ。今回は前回から続く、こじれにこじれて解決までに3年かかったという「自転車事故」裁判の行方について。後方を確認せずに走行車線へはみ出した自転車が「逆ギレ」して罪をなすりつけた「チャリテロ」裁判の結末は?
軽車両の自転車はどこまで車両や歩行者と共存できるのか? その15
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(前回までのあらすじ)現役警察官のTさんが実際に関わったという、ワゴン車と自転車の接触事故。車道を走っていた自転車が、主要幹線道路に停車していた自動車を避けて走行車線へはみ出した瞬間、ワゴン車と接触。どう考えても目視で後方確認せずに飛び出した自転車に過失がある事故と思われたが、自転車側は「停車していた車にも原因がある」と、停車中の車に罪をなすりつける始末で、さらに事態は深刻化する……。
吉田:で、結果的に今回の事故はどうなったんでしょうか?
Tさん:一緒に同行した私の若い部下が自転車の方へ詰め寄りましたね(苦笑)。「あなたの事故歴を調べさせて頂いたのですが、1年間で7~8回も自転車とクルマの接触事故を起こしているようですけれども、そう考えると相当注意力散漫な自転車の運転が引き起こした事故だと思うんです。今回はドライブレコーダーにあなたの不注意な運転の記録が残っていたので、裁判になった場合は証拠としてワゴン車の運転手さんに提出してもらいますが、このままの平行線で、接触事故の過失があなたにあると非を認めないと裁判になって、あなたの過去の事故歴も全部調べ上げられてしまい、正直勝ち目はないですよ」と、ガツンと言いたいことを言ってました。若い警察官は活気があっていいですよね(笑)。
吉田:ということは、人身事故ではなく物損事故での処理で済ませたってことですか(笑)?
Tさん:ええ、そうです。こういうチャリテロは全国で多いですから、人身事故で処理してしまうとクルマの運転手さんが可哀想ですしね。私たちは民事不介入ですので当事者同士で解決してもらいますが、揉めた場合は途中から人身事故へ切り替えて処理することも可能ですし、裁判まで発展した場合には、自転車の方が圧倒的不利になって痛い目に遭うだけですけどね。
やはりドライブレコーダーで証拠を記録することの重要性はもっと世間に訴えていくべきです。クルマの運転手さんを守れるのはハッキリ言って、ドライブレコーダーだけです。同乗者の方が飛び出してきたのは自転車だと説明しても、現場における目撃したという状況証拠にしかすぎませんが、しっかりと映像で証拠を残せるドライブレコーダーでしたら十分に裁判所へ提出できる証拠になります。ですので、ドライブレコーダーは自分自身を守るセルフディフェンス対策としてクルマ1台にドライブレコーダー1台装着という時代にしていかないと、チャリテロの自転車に軽車両ということで翻弄され、負けてしまうだけです。
吉田:なるほどねぇ。この接触事故の過失割合は最終的にどうなったんでしょうか?