この狙いは、言うまでもなくシリコンバレーの独占状況に対抗する政治的処置に他なりません。来年5月25日以降、「GDPR」の施行により、5億人以上を要するEU域内のデジタルユーザーの情報を勝手に中央集権的シリコンバレーに集めることは違法行為とされ、もし、違反すれば厳しい処罰が下されることになります。その罰金額は、前会計年度の全世界の売上高の4%を支払う必要があります。たった一度だけの違反で。
これにより、全世界のサイバースペースの大半を事実上独占していたシリコンバレーのパワーは、大きく削がれると予測されています。SNSはもとより、アドネットワークや検索等、多くの企業が欧州から事実上撤退するか、別の方法を考える必要に直面することになります。
例えば、日本のメーカーが欧州の展示会に出展して名刺を集めても、そのデジタルデータを日本に送ることができません。
中国がシリコンバレーの侵略を防ぎ、独自サービスを定着させて国家のサイバースペースを守ったように、EUは、同じようにシリコンバレーの侵略から、域内のサイバースペースを守ろうとしています。
欧州の盟主であるドイツで民族主義政党が議席を驚くほど増やす危機感もあり、メルケル首相は、今後「GDPR」をさらに強固に進め、欧州内情報産業を守る必要があるのです。
今週、冒頭でお話しましたように、世界は大きく分断へと向かいます。少なくとも、サイバースペースでは来年5月25日から、大きな分断がはじまります。
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