無投票で自民党の総裁に再選した安倍首相。一見、党全体が一丸となって諸政策を推し進めていく意思表明のように思えますが、そうではないと断言するのがジャーナリストの高野孟さん。メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』で、この再選には「安倍首相に辞意表明をさせるという企みが孕まれている」と記しています。
総裁無投票再選の裏側
安保国会の会期末が近づいたが、
(1)8日告示の自民党総裁選で安倍の無投票再選が確定するのかどうか
(2)安保法案の強行採決をどのタイミングで決行するか、それが出来ずに「60日ルール」適用か
(3)それに対する世論の沸騰と国会デモの高揚に安倍の心身は耐えられるのか
(4)その最中に辺野古基地建設をめぐる「1カ月休戦」期間が終わり、沖縄県が新たな行動に打って出て、それに対して安倍が強硬姿勢を示すかどうかの緊迫局面が迫る──
などの多次元方程式が絡んで、解を得るのは簡単ではない。
何が起きるか分からない会期末
(1)について。尾辻秀久元参院副議長が4日、総裁選に野田聖子=前総務会長が立候補した場合に推薦人になると意思表明したのは1つの波乱要因ではあるけれども、彼女が8日までに20人の推薦人を集めるのは極めて難しく、安倍の無投票再選がこの日に確定する公算は大きい。
しかし、別項「日刊ゲンダイ」コラムで述べたように、これは安倍の党内「一強多弱」態勢の下に全党がひれ伏して、打って一丸となっていることを意味せず、むしろ無気力と組織劣化の表れであり、さらにその裏側には、安保法案は成立させるけれども、その栄誉と共に国民不人気の責任を全部安倍に負わせて辞意表明させるという、意地悪な企みも孕まれている。安倍支持を真っ先に表明して無投票再選への流れを作ったのは策士=二階俊博総務会長だから、余計に怪しい。