公約にベーシックインカム導入や原発ゼロ、消費増税反対などを盛り込むと言われている「希望の党」ですが、候補者公認で生じた不協和音、明確にできぬ安倍政権との対決構図、加えて枝野幸男氏による新党立ち上げ等で早くも失速ムードが漂っています。メルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では、著者で元全国紙社会部記者の新 恭さんがこのような事態に陥った原因を解説するとともに、小池氏が政権交代を実現するために示さねばならないことを記しています。
安倍政権打倒への本気度がわからない小池都知事
依然として、わからない。「希望の党」の小池百合子代表は、本気で安倍政権を倒すつもりがあるのだろうか。
まるで敵は合流民進党にいるかのように、「全員受け入れはさらさらない」と高飛車に民進党左派を排除し、安倍首相と親密な日本維新の会にすり寄ってみせる。
たまらず、枝野幸男氏は「立憲民主党」なる新党を立ち上げた。いわゆる「リベラル票」の受け皿が誕生した。
だが、この状況が野党分断なのか、野党結集なのか、あるいは自民と希望による保守票の奪い合いなのか、まだはっきりとしてこない。
小池氏と前原氏は「同床異夢」ながら、小池新党と民進党の合流を決断した。しかしそれぞれの野望の食い違いから、思い通りに船出ができず、メディアはゴタゴタぶりを連日、長時間にわたって視聴者に見せつけた。
森友・加計疑惑など「総理の権力私物化」問題はどこかに置き忘れたかのようだ。
このためか、希望の党への期待感は急速にしぼみ、自民党首脳は「小池さんは衆院選に出るべきだよ」と余裕を装っている。
10月1日付朝日新聞の天声人語は、民進党の前原誠司代表を倒産のふちの社長に例えた。「この会社に未来はない、上り調子の新興企業の社長に拾ってもらえ」。
あわれな代表の姿である。そんなイメージの報道も目立った。はたして、そうなのだろうか。
国政で実績ゼロの「希望の党」。大看板の小池百合子代表と若狭勝氏、細野豪志氏ら何人かの自民党、民進党離党者、それに「日本のこころ」の中山恭子氏が参加して産声を上げたばかりだ。
資金がなく、候補者の擁立に苦戦していた。供託金や選挙資金を準備できない新人は立とうにも立てない。
そこに、前原代表が民進党の候補者、資金、スタッフ、連合の組織力を「持参」して合流する話を持ち込んだのだ。
小池氏にとって、渡りに船。というより、千載一遇のチャンスだった。苦し紛れの大義なき解散への世間の風当たりは強い。政権が自分に転がり込んでくるかもしれない。
若狭、細野両氏に任せていた新党のプランをリセットし、自らが代表に就いて「希望の党」を旗揚げしたのは、「小池総理誕生」の可能性が生まれたからにほかならない。
そうした心の動きを見越して、前原氏はあえて軍勢を率いて小池氏の軍門に下る決心をしたということだろう。
ここまでのシナリオは前原主導で進んだといえる。決して倒産寸前の社長が泣きついたという感じではない。
民進党が希望の党への合流を決めた両院議員総会。そのさい、前原代表は「名を捨てて実を取ろう」と呼びかけた。
名を捨てるのはわかる。実とは何か。小池旋風に吹き飛ばされるより、そのなかに飛び込んで一体化し、風に乗る。もちろんそういう意図があるだろう。
だがそこに、もっとギラギラした前原氏自身の野望はなかっただろうか。検証してみよう。