信玄から孫正義まで…成功した経営に共通する「孫子の兵法」

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武田信玄や豊臣秀吉などの戦国武将、そして現代において多くのシェアを獲得する企業の経営者たち。その成功にはどちらも「孫子の兵法」が深く関わっていると『戦略経営の「よもやま話」』の著者、浅野良一さんはいいます。

戦国大名と孫子

孫子の兵法は13篇からなっており、決して読むのに骨の折れる量ではありません。
ただし、正しく理解するのは別ごとですが、戦国時代の武将もこれを必死に理解しようとしたことが察せられます。
先日のNHKの番組でも、長宗我部元親がこの書を読み戦術に活かした逸話がありました。

孫子と言えば最も有名な武将は武田信玄です。
武田信玄の「風林火山」がよく知られています。
しかし、孫子からの忠実な抜粋であれば「風林火陰山雷」となるようですが、
広告センスがあるのか、わかりやすいように略しています。

武田信玄の孫子の兵法の事例はいろいろありますが、そのなかで「三方ヶ原の合戦」は代表的な合戦です。
信玄は、諜報活動が巧みで「透破(すっぱ、とっぱ)」と呼ばれる忍者がしたのか山本勘助がしたのか、三方ヶ原の地形を熟知した戦法は芸術的ですらあります。

信長は、諜報と調略を重視した働きを得意としたようです。
桶狭間の戦いでは、今川義元の首に焦点を定め奇襲を行い勝利していますが、その折には今川義元の所在を探し求め、その情報をもたらした簗田政綱を第一番の手柄としています。

信長の行動は現実的でかつ論理的です。
現実的でかつ論理的な分析を骨子とする孫子の兵法を理解していたふしが伺われます。
武田信玄のように表には出しませんが、かなりの勉強家で孫子をよりどころにしても不思議はありません。

その戦法を窺い知ると、桶狭間の合戦の「兵とは詭道なり」以外は勝てる状況をつくりあげて、その機が熟すまで忍耐強く準備を怠っていません。
孫子の言うところ「勝つべきは敵にあり」とあるように相手が負ける状況になるまでできるだけ冒険を避けています。

孫子の兵法謀攻篇第三に「百戦百勝は善の善なるものに非ざるなり。戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり」とあります。
戦えば巨額の費用を要します。
それゆえに、戦わず相手を取り込むのが最も上策です。

秀吉は調略の名手で、敵方の内情を徹底的に調べ主従の関係や性格を巧みに探りだし、味方に引き入れたり離間させたりして、戦わずして戦力の増強をも実現させています。
さしずめ「M&A」による戦略増強です。
この能力こそが、信長の合理精神を満足させて重宝し評価することになったとも解釈されます。

経営において、情報の収集とその活用は成果を実現させる最も大切な要素であってマーケティングの最も根幹をなす考え方です。
顧客が何を欲しているかという情報が、顧客の視点でわかれば百戦してあやうからずの状況が実現されます。

最小の経営資源で最大の成果を得るのは、情報が最も肝要な要素であり、時代を超えて基本戦略になります。

さらに続けると、孫子のなかには現在経営の最も基礎になる論理が述べられています。
兵とは国の大事なり、これをはかるに五事を以てし
一に曰く道、二に曰く天、三に曰く地、四に曰く将、五に曰く法なり」とあります。

“道”とはあるべき成功の基本要因、「顧客の欲求」です。
“天”とは「強み」が活きかつ活かされる機会です。
時代に受け入れられるには、まずこの道理に合っていなければなりません。

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