ビットコインに手を出した人に、お金を貸してはいけない理由【中島聡】

ビットコイン、Bitcoin
 

短期間で大きく値を上げるなど、常に話題の中心にいる仮想通貨の一つ「ビットコイン」。一方で、その存在そのものを否定的に捉える識者が多いことも事実です。メルマガ『週刊 Life is beautiful』の著者で、Windows95の設計に携わった世界的プログラマー・中島聡さんは自身のメルマガの中で、読者からの意見に答える形で「ビットコインが80年代の不動産バブルよりも危険である理由」を解説。そして、中島さん自身これほどバブリーなものには決して手を出さないとし、これに手を出す人には絶対お金を貸さない、とまで明言しています。

ビットコインはバブルか?

先週の私のビットコインに関するコメントに対し、以下のような御意見を読者の方からいただきました。

20170919 読みました。Bitcoin はゼロサムゲームで価値を生み出さないので、所有すべきではないとの事ですが、ちょっと違和感があります。そうであれば、全ての通貨は Bitcoin と同じく持つべきではないという結論になってしまうような気がしますし、そもそも、何が「ゼロサム」なのかという疑問があります。

流通量で言えば、信用取引や利息があるので、ゼロサムではないと思います。Bitcoin であればマイニングも加わりますし、USD や JPY であれば中央銀行次第で伸び縮みしますよね。

「価値」で言えば、現代の通貨の価値とは交換可能性(=信用)につきると思います。信用の度合いはさておき、Bitcoin は USD や JPY と現実に交換可能ですし、そのレートは日々変化しているのでゼロサムではなさそうです。さらには、ブロックチェーン技術により、記録が完全に保全される・送金コストが極めて低い等、既存通貨より秀でた点が「価値」を生み出していると理解しています。

そして、通貨市場全体(=価値の交換需要)も伸び縮みしており、Bitcoin もその一部であるので、やはりゼロサムとは思えません。

もちろん、Bitcoin が今後生き残るかどうかとは、全く別の話ですが、ゼロサムだから~というのは違うかなと。

せっかくの機会なので、なぜ私がビットコインを「(長期的な投資対象としてふさわしくないと思うかを説明したいと思います。

ゼロサムゲームとは、ゲームに参加した人の中で「儲けた人」と「損した人」の金額の合計がゼロになるゲームのことです。私も学生時代にしていた「賭け麻雀」は典型的なゼロサムゲームで、誰かが得をすればその分と同じだけ誰かが損をすることになります。

逆に、株式市場は、典型的な「非ゼロサムゲーム」です。株式市場に公開されている企業の経営陣は、株主のために利益をあげ、会社を成長させ、その恩恵を配当や自社株買い(結果としての株価の上昇)という形で、株主に還元します。

年ごとに若干の変動はあるものの、株式市場は、平均して15%ぐらいの利益を配当もしくは株価の上昇という形で株主に還元(リターン)しています。

株式市場でも、得する人たちと損する人たちがいますが、彼らの損得を合計すると、(賭け麻雀のように)ゼロではなく、(平均して株価総額の15%ぐらいのプラスになるのです。

不動産も同じで、リターンは場所や物件によって違いますが、購入金額の数パーセントから十数パーセントの家賃収入があります。

株や不動産に(賭け麻雀のようなゼロサムゲームと違って)リターンがあるのは、それ自身に「価値を生み出す力」があるからです。会社であれば商品やサービスを作って利益をあげる力だし、不動産であれば誰かに貸して賃料を取る力です。

長期的に投資する価値があるもの」とは、そんな「価値を生み出す力を持つもの」のことなのです。

賭け麻雀はいくらやっても何も新しい価値は生み出しません。一人当たり100万円持ったプロの麻雀師が4人集まって密室で一晩賭け麻雀をしても、出てきた時の彼らの持っている現金の合計は入った時と同じ400万円なのです。「賭け麻雀」が会社の経営や不動産経営と違って商売にならないのは、必ず誰かが負けなければ儲けることができないからです。

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