いじめや家庭問題などが原因で、不登校や非行に走る子どもたちは後を絶ちません。今回の無料メルマガ『Japan on the Globe-国際派日本人養成講座』では、そんな子どもたちの受け皿となり、昔の輝きを取り戻させている奇跡の通信制高校「勇志国際高等学校」をご紹介します。野田将晴校長が掲げる「利他心」とは、そして戦後教育が奪ったものとは一体何だったのでしょうか。
教育者は聖職者 〜 勇志国際高校の挑戦
熊本県の離島の町、御所浦町の通信制高校・勇志国際高等学校の野田将晴(まさはる)校長に、ある生徒の母親から電話がかかってきた。
「スクーリングで何かあったのでしょうか」
その生徒、黒木太一は、勇志国際高校の開設とともに、最初に入学してきた114名のひとりであった。小学校4年から不登校になって家に引きこもっていた。人の顔をまともに見ることができす、人とのコミュニケーションがとれない。友達もいない。週2回、心療内科に通い、薬をたくさん飲まされていた。
しかし、スクーリングから帰って、通院するたびに、先生は頭を傾げながら、薬を減らしていく。ついに「明日からもう来なくていい。薬も飲まなくていい」と言われたという。
野田校長がスクーリングの経過を話すと、母親は電話の向こうで声をあげて泣きながら、「何年間も治療を受けて、薬をいくら飲んでも改善する気配もなかったあの子が、完全に治ったんです」と、何度も何度もお礼を言った。
黒木はさらに2年生、3年生と進級するに従い、著しい成長を見せた。勇志高校で多くの不登校の生徒が立ち直っているというので、NHKがドキュメント番組を作りたいと申し入れてきた時、野田校長は黒木を紹介した。黒木はこう言った。
校長先生、昔の僕と同じように苦しんでいる人がまだ沢山いらっしゃると思います。そういう人たちに今の自分を見てもらうことでお役に立てるなら、喜んで取材を受けます。
(『教育者は、聖職者である。』野田将晴 著/高木書房)