数々の疑惑が取り沙汰されている加計学園グループの獣医学部新設を巡り、大学設置審は先日、文科大臣への答申延期を決定しました。同学園問題を追求してきたメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』の著者・新 恭さんはこれを受け、「認可という結論ありきのポーズではないか」として、その理由を提示するとともに、続々と明らかになる官邸サイドの「加計隠し」を厳しく批判しています。
「加計隠し」の浅知恵が続々発覚
若者の人口は減り、大学は増え続ける。半数は定員割れといわれる昨今、大学経営は楽じゃない。
問題の加計学園グループにしても、巷の噂によると、財政事情は火の車。傘下の千葉科学大などは赤字が慢性化しているらしい。
そんな事情もあるのだろうか、テレビでおなじみの顔を、研究実績とは無関係に教授や講師に迎え、自ら学問のレベルを押し下げているのがこの国の多くの私立大学の実態だ。
とりわけ加計学園では、テレビに出ずっぱりだったころの大物司会者、みのもんた氏を傘下の5大学のうち複数校の客員教授とし、名前だけで月20万円の報酬を支払っていたというから、あきれてしまう。
週刊文春の取材にみの氏は「客寄せパンダだったんだろうね」と話している。それにしても当時、国民の血税から計二十数億円といわれる助成金をもらっていた私学が、一度として教壇に立たなかったみの氏にそれだけの額を支払い続けたのである。給与カットされた別の高齢教員とみの氏の待遇を巡って裁判沙汰さえ起ったらしい。
さて目下の関心事は、加計学園・岡山理科大獣医学部の新設が、このまま文科省に認可されるかどうかである。
諮問を受けている大学設置・学校法人審議会は8月末に文科大臣に答申する予定を延期した。教員数か、設備か、カリキュラムの中身か、いずれにせよ計画の内容に不十分なところがあるための「保留」だとメディアに報じられている。
このニュースに接したとき、「やっぱりそうきたか」と思った人は多いのではないだろうか。これだけ加計学園の疑惑が騒がれ、政権を揺るがしているのに、大学設置審のメンバーが、いつも通りのチェックで良しとするとは考えにくい。いわば沽券にかかわるだろう。
だが同時に、これは「認可」という「結論ありき」のポーズではないか、厳しく審査したという「アリバイ」づくりではないか。そんな疑念も当然、湧いてくるだろう。実は、大学設置審がいったん結論を保留にするケースはよくあることなのだ。
文科省によると、過去10年についていえば、保留になった件数は110件あり、認可されたのがそのうち89件、取り下げが19件、不認可は2件だった。つまり保留になっても、最終的には認可されるケースがほとんどだ。
大学設置基準は、教員の編成や、施設、設備、カリキュラムなどについて最低限の基準を定めたもの。この内容に沿って、不備のない申請をしておけば、基本的には認可が下りてきた。
だが、加計学園の場合、国家戦略特区での獣医学部新設に必要な「石破四条件」を満たしているかどうかを十分議論しないまま特例が認められたという拙速感、ないしは軽視、無視の疑いがある。前文科事務次官、前川喜平氏が「行政をゆがめられた」として、文科省による最終的な認可の段階で、正しい判断をするよう求めている。