安倍政権をジワジワ追い詰めた、前川喜平氏の「人間力」

 

安倍首相の明治憲法に回帰するような憲法観はもとより、「人づくり革命」とか「一億総活躍」とかいったスローガンであらわされる単眼的な人間観には大いなる疑問を抱いていたことだろう。

しかもその権力者が、ほとんど国としては必要としない獣医学部を特例的に新設することを決め、その事業を親友の経営する加計学園に担わせるための認可を、文科省に求めてきたのである。

加計学園が安倍首相はもとより自民党の有力議員の選挙を応援してきたことも知られている。学問や教育が、政治によって歪められる心配もあるのだ。

加計理事長と政治家。これはもう、絶望的に癒着した関係に見える。

松沢成文参院議員が数回にわたり国会で質疑を繰り広げたのが、加計学園グループの学校法人英数学館の敷地内に「自民党岡山県自治振興支部」という自民党の政党支部が存在することだ。

支部長は加計孝太郎氏。会計責任者、埋見宣明氏は岡山理科大同窓会の副会長。

事務担当者、小林正博氏は加計学園グループ・並木学院高校の校長。支部の支出の全てが政治活動費、組織活動費であり、何らかの政治活動が行われていたことは明らかである。

つまり、加計学園の英数学館に事務所を置いて政治活動をやっている。そのスタッフは学園の関係者ばかりということだ。

松沢氏は「教育基本法十四条の二に違反するのではないか」と7月10日の閉会中審査でただしたが、当時の松野文科大臣は例のごとく明確な答弁を避けた。そこで松沢氏は、参考人として出席していた前川喜平氏に「事務方のトップの経験者としてどういう見解をお持ちですか」と質問した。

前川氏は「一般論としては」と断ったうえで、「学校の関係者、校長以下の教職員がそういった学校の立場で政治活動をするということは教育基本法に違反するおそれがあると考えております」と語った。

09年の安倍氏の衆院選挙で、加計学園グループは、傘下の岡山理科大学、千葉科学大学、倉敷芸術科学大学などに所属する事務職員を選挙運動の応援に動員した。

これに教職員組合が反発。「職場の上下関係において上位にあるものが行えば、強要の意図がなくとも下位のものは非常に断りにくい状況に追い込まれる。これは思想信条の自由に対する重大な侵害である」と、加計理事長あてにパワー
ハラスメントの調査を求める要求書を突きつけている。

学校法人が、事務職員を半ば強制的に特定の国会議員候補者の選挙運動にかかわらせるというのは、公職選挙法にもふれる問題ではないか。しかも国から多額の私学助成金を受けているのである。学校ビジネスを拡大するのに政治家を利用し、国からカネを引き出すという加計理事長の経営術は、教育のあり方を考え続けてきた前川氏と、根本精神からして相容れない。

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