就任からわずか半年で、数々のメディアから疑問視され始めたトランプ大統領の政治手腕。アメリカの同盟国である日本は、これを笑って見ていられる余裕はないようです。メルマガ『国際戦略コラム有料版』の著者、津田慶治さんは、「アメリカが付け焼刃的に始めた保護貿易が、日本に深刻なダメージを与える可能性がある」と、日本の今後の先行きに対して厳しい見方を示しています。
米国、戦略なしで八方塞がり
米国の経済戦略、外交戦略が何なのかが見えてこない。その場その場に対応しているだけで、方向性が見えないし、戦略を立てて対応しているのどうかが不明である。戦略なしの米国自体が八方塞がりになり始めている。さあ、どうなりますか?
世界戦略は何か?
トランプ政権に世界への戦略があるのかが不安になる。北朝鮮の弾道ミサイルに対応する戦略が、戦争を見据えているのか、平和的対話をする意思があるのかどうも見えない。米国のヘイリー国連大使は、「やむを得なければ」軍事力を行使する用意があるというが、マティス米国防長官は、北朝鮮が戦争を挑発する以外、「戦争はありえない」という立場である。
北朝鮮は、米国に戦争の意思なしと見て、「大小の『贈り物』を贈り続ける」とする談話を出し、核・ミサイル開発をさらに推し進める姿勢を示している。それでも米国は、欧米銀行の北朝鮮関連資金の差し押さえをするのみである。
韓国文大統領にも北朝鮮の対話は、適切な条件が必要として、禁止をしなかったことで、それを受けて、中国とロシアは平和的な解決が必要として、国連安保理の米国主導の北朝鮮非難声明も反対している。米韓首脳会談で文大統領に強く当たらなかったことで、そうなっている。
米露首脳会談でも中東の安全地帯での停戦に合意できたが、北朝鮮問題では合意しなかった。ということで、トランプ大統領が言ったレッドラインである、ICBM実験をした北朝鮮をどうするのか見えないことになっている。
これはオバマ前大統領が事前にレッドラインとしたシリアでの化学兵器使用と同じで、そのオバマ前大統領を強烈に非難したトランプ大統領も、同じ轍を踏むことになる。
戦略方向性が閣内統一しているなら、発言も統一しているはずであるが、その場その場で適当に対応しているようにしか見えない。
G20でも世界から米国は孤立している。自由貿易でもパリ協定でもドイツなど欧州や中国、日本など世界主要国とは違うポジションであり、意見を共有する国がなく、米国が世界の覇権国ではなくなり、意見を先導するような立場ではなくなったことが、G20でも明確化した。
その意味では、世界に覇権国はなく、Gゼロの世界になったと言える。今回のG20を主導した国がないことが今後大きな問題になるとみる。