4件もの談合で、「独占禁止法違反」を認定されたNEC。6月22日に開催された株主総会では、業績不振ということも相まって、株主から怒号が飛び交う事態となったようです。すでに発表された2017年3月期第1四半期の連結決算では、もうけを示す営業利益が前代未聞の299億円の赤字でした。NECと古くからの縁がある世界的プログラマーの中島聡さんは、自身のメルマガ『週刊 Life is beautiful』で、NECという企業が変貌してしまった原因について独自の見解を述べています。
私の目に止まった記事
NEC という会社には、学生時代から結構縁があるので、この記事を読んで「NEC もやはりこんな会社になってしまったか」と少しがっかりしましたが、驚きではなかったのも事実です。
私が最初にプログラミングに触れたのは、NECのTK-80 だったし、その後 Game80 コンパイラ、CANDY と私が学生時代に作ったソフトウェアは、すべて NEC のパソコン向けのものでした。その影響もあってか、私が卒業した年には、NEC は就職先として、理科系の学生の一番人気でした。
なので、その頃に私にとっては NEC は「パソコンメーカー」だったのですが、社会人になってからは NEC が NTT や NTT DoCoMo のインフラ(電話交換機)を提供する会社であることを知り、その後、UIEvolution を立ち上げて携帯電話向けのソフトウェアを作り始めてからは、NEC が主要な携帯電話メーカーの一つであることを認識しました。
NEC にとって不運だったのは、ここ20年ほどの間に、パソコン事業は Windows によってコモディティ化し、通信事業者向けのインフラ事業はデータ通信の比重が増えるに従ってシスコなどのネットワーク機器メーカーとの戦いを余儀なくされ、携帯電話機事業は iPhone の登場で壊滅的な打撃を受けるなどの大変化にさらされたことです。
そう考えると、NEC という企業が未だに生き残っているのが不思議なぐらいですが、通信事業者や政府向けの IT サービスを提供する、いわゆる「大手 IT ゼネコン」の一社として、(天下りや談合を活用して)甘い汁を吸って生き続けてきた、というのが現状だと思います。
なので、今回の談合の話も、私にとっては全くの驚きではないし、(厳しい言い方をあえてすれば)経営陣がビジョンのかけらも持ち合わせていない、サラリーマン経営者なのもよくわかります。
日本のベンチャー企業が育たないことを嘆く声を良く聞きますが、80年代から90年代に日本の理系の大学を卒業した学生たちのほとんどすべてが、家電メーカーやITゼネコンに就職し、いわゆる「(保守的な発想の)サラリーマン」「(なんでもできる)ゼネラリスト」になってしまったことが、結果的に日本人から企業家精神を奪い、かつ、世界レベルで戦えるソフトウェア・エンジニアの圧倒的な不足という状況を生み出してしまった事実には注目する必要があると思います。