実は赤字の1000円カット「QBハウス」。NY進出は吉か凶か?

 

6月15日にニューヨークのマンハッタンにアメリカ進出第1号店をオープンさせた、ヘアカット専門店「QBハウス」。格安を一番の売りにする同店に、物価の高いマンハッタンでの勝算はあるのでしょうか。無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』の著者で、店舗経営コンサルタントの佐藤昌司さんが同社の今後の展開について分析しています。

QBハウスがニューヨークに初進出。勝算はあるのか?

10分1,000円」をうたうヘアカット専門店「QBハウス」のアメリカ1号店が6月15日にニューヨークにオープンしました。北米での多店舗展開を計画し、年内にニューヨーク市内にあと2店舗をオープンする計画です。

カット料金はチップ別で20ドル(約2,200円)です。座席数は3席の店舗で、マンハッタン地区にあるグランドセントラル駅近くに出店しました。物価が高いマンハッタン地区のため、日本の倍以上の価格にしたようです。

QBハウスを展開するキュービーネットは1995年に設立され、翌年に1号店がオープンしました。その後は順調に店舗数を増やし、2002年に国内で100店舗を突破しました。2007年には国内来客者数が1,000万人を突破しています。2016年は国内来客者数が約1,600万人で国内店舗数は500店を超えています。

海外でも店舗網を広げています。2002年にシンガポールで海外初進出を果たしました。現在はシンガポール、香港、台湾に合計100店以上を展開しています。2016年の外国来客者数は約280万人にもなります。

QBハウスはカットに特化することで10分というスピードと1,000円(税抜き)という低価格を実現しました。シャンプーを省き、カットした髪は掃除機のようなエアウォッシャーで吸い取ります。シェービングやマッサージ、カラーリングといったサービスはありません。座席数は3席程度で、短時間でカットして高回転させることで低コストと低価格を実現しています。

単価が1,000円程度ではビジネスが成り立たないようにも思えます。しかし、4人をカットすれば40分で4,000円を確保できます。一方、一般的な理容室や美容室で40分程度で4,000円程度のところは珍しいことではなく、それで経営が成り立っています。40分4,000円であれば10分あたり1,000円になります。QBハウスの10分で1,000円という価格設定は、客数さえ確保できれば利益が確保できるビジネスモデルといえます。

メインターゲットは20~40代の男性です。「髪が伸びた分だけ切りたい」「とにかく安く済ませたい」「時間がないので短時間で済ませたい」と考えている人を取り込むことに成功しました。特に、忙しい男性のビジネスパーソンに好評を博しています。賃金がなかなか上がらない今の日本のビジネスパーソンにはありがたいサービスともいえるでしょう。

また、女性や子供の需要もあることがわかりました。女性をターゲットにしたブランドや家族連れをターゲットにしたブランドを過去に立ち上げています。2011年には20~40代の男女をターゲットにした20分で2,000円(税抜き)の「FaSS」をオープンしています。FaSSではカットにスタイリング(コテを使った巻き髪など)が加わります。小学生までは1,500円(税抜き)です。

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