築地市場移転問題について、「一旦は豊洲市場に移転した後、築地の再整備を検討する」との最終案を発表した小池都知事。これを受け、無料メルマガ『マスコミでは言えないこと』の著者で月刊正論「ネットバスターズ」を連載中のITジャーナリスト宮脇睦(みやわき・あつし)さんは、「実に狡猾だ」と厳しく批判しています。
豊洲赤字論に欠ける富の再分配という行政の役割
混迷が続く築地市場の行方について、小池百合子東京都知事がひとつの「方向性」を示しました。
築地を守り、豊洲を活かす。
と銘打ち、一旦は豊洲市場に移転した後、築地の再整備を検討するというものです。
実に狡猾です。
テレビ朝日「モーニングショー」で玉川徹テレビ朝日社員は、「非常に練られたやり方」と推測に仮定を重ねて礼賛していましたが、「練られた」という一点にのみ同意します。
具体策を示さぬ「方向性」のみで、メディアコントロールが可能となったからです。
各種報道に触れても、もやもやしている方は少なくないでしょう。その理由を端的に述べればこうなります。
「具体策が示されていない」
築地を再整備する計画どころか、豊洲移転のスケジュールも、その後の再移転も一切示されていません。
だから、ファクトを下敷きとする建前のマスコミも漠然としか報道できません。都知事と東京都が提示した、わずかな資料を基に推論を重ねるしか手段がなく、しかしそれはファクト=事実とは異なり、抑制的になってしまいます。玉川徹氏は異例という異形です。
一方で「築地を守る」とか「伝統を守る」という言葉に、善良なる日本人はシンパシーを得ることでしょう。守るとは、主に弱者に向けられ、正義を守護する文脈で語られるからです。
錯覚です。
ヤクザだって自分の縄張りを守りますし、代紋の伝統だって守ります。また、テキ屋系のヤクザが、屋台を日本の伝統文化として守るためにNPO法人を作ったという話も聞いたことがあります。
守る、とはその守る正当性と必然性が検証されなければならず、「築地ブランド」は、巨額の都税を投入してまで守らなければならないのか、それに見合うのか、という説明が一切ないままで、判断しろと言われても「できない」のです。これが「もやもや」の理由のひとつです。
そしてメディアの口を封じることに成功しました。だから「狡猾」。
しかし、すでに明らかになっている公知の事実から見えてくることもあります。実にシンプルな話です。そしてそこにも「もやもや」の理由があります。