暑くもないし、とくに緊張もしていない、運動をしたわけでもないのに汗の量が多いと、「汗かき?それとも何かの病気?」と心配になりますよね。
今回は、汗かきとの線引きが難しい「多汗症」についてのお話です。
多汗症?それとも汗かき?
誰でも運動したときや、暑いときには汗をかきますね。
ヒトの身体は、体温が上がると汗が出て、汗の蒸発とともに熱を発散(汗の気化熱)で体温を下げています。
必要以上に汗が出て、日常生活に支障がでるほど汗で皮膚の表面が濡れてしまう場合は、多汗症の可能性があります。
一方、誰しも汗をかいてしまうような状況、たとえば激しい運動をした、気温が高い日などで人と比べて多く汗が出ているのは、汗かきといえます。
多汗症の診断基準
日本皮膚科学会の「原発性局所多汗症診療ガイドライン(2015年改訂版)」によると、明らかな原因がないまま、部分的な過剰な発汗が6ヶ月以上続き、以下にあげる6症状のうち2項目以上があてはまる場合に、「多汗症(原発性局所多汗症)」と診断されます。
・最初に症状が出るのが25歳以下であること
・対称性(体の左右対称)に発汗がみられること
・睡眠中は発汗が止まっていること
・1週間に1回以上、多汗のエピソードがあること
・家族歴がみられること
・それらによって日常生活に支障をきたすこと
多汗症の分類
多汗症は、年齢や性別に関係なく見られる病気です。
全身に広がっているものは「全身性多汗症」といい、身体の一部(とくに発症しやすいのは手のひら、足の裏、脇の下)で発汗が増えているものを「限局性多汗症」といいます。
また、とくに病気がなく健康な人に発生するものを「原発性多汗症」、原因になる病気があって多汗が生じるものを「続発性多汗症」といいます。
続発性多汗症の原因となる病気は、感染症や悪性腫瘍、甲状腺機能亢進症、不安障害、神経疾患などがあります。
多汗症によって、手が湿っているために電子機器が壊れてしまう、大切な書類が湿って破けてしまう、人と握手ができない、においが常に気になってしまうなど、日常生活に支障をきたし、精神的な苦痛を感じているケースが多々あります。
「商品や書類など大切なものを汚してしまわないか?」「相手に不快感を与えてしまわないか?」とより緊張が増してしまい、その結果、さらに汗をかいてしまうということもあります。
また、女性の場合は更年期障害によって汗の量が増えることがあります。
下半身は冷えているのに上半身に汗をかいているような場合には、更年期障害の症状のひとつと考えられるため、婦人科も受診することをすすめます。
多汗症は何科で診てもらえるの?
多汗症の治療を行っている皮膚科を探して受診ができればベストです。
多汗症専門外来、発汗異常外来などがあたります。
お近くに見つからないときには、まず皮膚科を受診し相談してみましょう。
多汗症の治療にはどんな方法があるの?
原発性局所多汗症診療ガイドラインで、エビデンスに基づいて診療アルゴリズムが作られています。
手のひら・足の裏に対しての第一選択は「塩化アルミニウム溶液(布手袋をはめ、塩化アルミニウム溶液を染みこませてゴム手袋で密閉する治療)」と「イオンフォトレーシス(専用の機器を用いて直流電流を通電させる方法)」があります。
次の選択に「ボツリヌス毒素局注(ボツリヌス菌という薬を注射によって注入する)」があります。効果があまり長続きしないのですが、わきの下には一定の効果を出しています。
【参考】『原発性局所多汗症診療ガイドライン(2015年改訂版)』(PDFが開きます)
執筆:吉村 佑奈(よしむら・ゆうな)
医療監修:株式会社とらうべ
<執筆者プロフィール>
吉村 佑奈(よしむら・ゆうな)
助産師・保健師・看護師。株式会社 とらうべ 社員。某病院での看護業務を経て、現在は産業保健(働く人の健康管理)を担当
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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