周辺火山、使用済み各燃焼の処理、事故の際の住民の避難経路など数々の問題が指摘される中、11日午前に再稼働した九州電力川内原発1号機。もちろん新聞各紙の1面はすべてこの話題でしたが、その伝え方にももちろん差がありました。ジャーナリストの内田誠さんがメルマガ『uttiiの電子版ウォッチ』が詳しく分析・解析しています。
川内原発1号機再稼働、新聞各紙はどう伝えた?
今朝の各紙、実際に再稼働された川内原発のニュースが1面トップに収まっています。関連記事と併せ、特徴が良く出ていますので、昨日分と重なる要素も多いですが、まずは基本的な報道内容を整理し、その後に各記事の紹介と分析に入りたいと思います。
基本的な報道内容
九州電力川内原発1号機が11日午前、再稼働した。東日本大震災後に作られた新規制基準のもとで初の再稼働となり、約2年間に及んだ「原発ゼロ」が終わった。安倍政権は今回の審査手続きを「ひな形」として、さらに原発の再稼働を進めていく方針。放射性廃棄物処理や避難計画の実効性などに多くの課題を残したまま、「原発回帰」が本格化する。
原発停止後、国内では火力発電への依存度が高まり、石油や液化天然ガスなど化石燃料の調達負担が重荷となったとされる。特に経営の厳しいとされる北海道電力、関西電力では2回、九州電力も1回、電気料金の値上げを行った。
安倍政権は原発を「重要なベースロード電源」と位置づけ、2030年の電源構成比率で決めた、原発割合20~22%に向けて原発による電力供給を増やしていく方針。電力各社も停止中の原発を再稼働させ、収益の大幅改善を図りたい考え。
ところが、東日本大震災後の節電や太陽光発電の普及で、昨夏は「原発ゼロ」で乗り切ることができ、猛暑の今夏も電力供給には余裕がある。各種世論調査では再稼働反対が賛成を大きく上回った中での再稼働となった。
これまでに規制委員会に審査を申請したのは川内を含め、15原発25基。関西電力高浜原発3、4号機と四国電力伊方原発3号機が主な審査を終えている。高浜原発については福井地裁が再稼働を認めない仮処分を出しており、伊方原発でも再稼働に不可欠な地元同意手続きが進んでおらず、いずれも年内の再稼働は見通せない。
川内原発周辺には過去に巨大噴火を起こした5つのカルデラがあり、全国の原発で最多。九電は、噴火の兆候が分かれば原子炉を停止して核燃料を運び出す方針を示したが、燃料の受け入れ先は決まっていない。火山学者の多くは、「噴火兆候の把握は困難」としているにもかかわらず、規制委員会は九電のこうした対応を「妥当」と判断。火山対応について規制委員会に助言する有識者会合を発足させるとしたが、会合が始まるのは川内原発の営業運転が予定されている今秋以降になる。
使用済み核燃料は全国の原発の貯蔵プールなどに1万7,000トン溜まっており、満杯に近づいている。政府は青森の再処理工場を稼働させ、再処理を進める考えだが、稼働の見通しは立っていない。仮に再処理が行われたとしても、その際に発生する高レベル放射性廃棄物の最終処分場も決まっていない。
他方、事故の際の住民避難訓練計画は規制委の安全審査対象外で、地元自治体任せ。昨年9月、政府は鹿児島県が策定した川内原発が事故を起こした際の避難計画を了承したが、それに基づく避難訓練は一度も行われていない。