元TBSワシントン支局長の山口敬之氏に「レイプされた」と顔出しで告白したことが大きな話題となった、ジャーナリストの詩織さんによる記者会見。なぜ、多くの状況証拠があったにも関わらず山口氏の逮捕状は取り下げられたのでしょうか? メルマガ『国家権力&メディア一刀両断』の著者・新 恭さんは、山口氏が不起訴となった背景に安倍官邸との「親密さ」が関係あると指摘。さらに「加計学園問題」でも問題視されている、安倍官邸による「権力の私物化」を一刀両断しています。
官邸は「犯人」を逃がしたのか?
安倍首相の“腹心の友”が加計孝太郎氏なら、さしずめ 元TBSワシントン支局長、山口敬之氏 のことは、“腹心のジャーナリスト”と呼んでみようか。
NHKの岩田明子氏と、産経新聞の石橋文登、阿比留瑠比のご両人もさることながら、昨今では山口氏への総理の寵愛が目立ち、どうやら官邸と警察がつるんで山口氏の卑劣なレイプ犯罪まで帳消しにしてやったのではないか、という疑いまで出てきたのである。
山口氏の罪状を告発したのは、ほかでもない、レイプされたと訴える被害女性自身だ。顔と名前をさらして、弁護士とともに記者会見するため司法記者クラブに現れた。
所轄警察が山口氏への逮捕状をとりながら、警視庁の司令で執行できず、結局は不起訴処分になったことについて、検察審査会に不服を申し立てたのだ。
女性は苗字こそ伏せたが「詩織」という名を公表、テレビカメラの前で、会見の意図を語った。
「山口氏が権力側で大きな声を発信し続けている姿を見たときは、胸が締め付けられました」
最近になって、頻繁にテレビに出演し、森友学園問題など安倍首相への批判的コメントに激しく反論していた山口氏。その姿を見るたびに、この女性の心身に刻まれた苦痛がよみがえってきたということだろうか。
「性犯罪の被害者を取り巻いている社会的、法的状況が被害者にとってどれほど不利に働くものなのかを痛感しました。今回こうしてお話しさせていただこうと決意したのは、そうした状況を少しでも変えていきたいと強く思ったからです」
その痛みを、第三者が本当に理解するのは難しい。それでも、性犯罪の被害者が書いた本を読むと、少しは想像がつく。
裏切られた人間は、「あの人ひどいんだよ!」と公言することができる。…
性犯罪被害者には、それができない。…「私、人に道を教えたら、車に引き込まれてレイプされたの!」と言えるか?「もう誰にも話さないでちょうだいね」と母に言われた一言が、世の中の常識を感じさせてくれた。被害にあったと人に話すことが“恥ずかしいこと”なんだという圧力を感じた。…屈辱と理不尽な罪悪感をいつも持っていた。性犯罪の被害者の悩みは、ここなのだ。
(小林美佳著「性犯罪被害にあうということ」より)
性的な被害を受けた自分は、傷ついて汚れていて恥ずかしくて、生きている価値がない人間だと思いながらも、命をつなぐこと。このような思いを感じながら日々暮らすことは、生きることをとても難しくした。
(山本潤著「13歳、『私』をなくした私~性暴力と生きることのリアル~」より)
詩織さんの場合、他人には計り知れない心の傷を受けたうえに、加害者がのうのうと、善人ぶって、ジャーナリストを続けていることが許せなかったに違いない。
それはそうだろう。詩織さんの言うことが真実だとすれば、山口氏は計画的な性犯罪におよんだことになる。詩織さんが語った事件の概略はこうだ。