国産初の小型ジェット旅客機として日本中の期待を一身に背負う三菱MRJですが、三菱重工業は先日、初号機の納入について「5度目」の延期を表明しました。当初日程から5年以上もの遅延になるとあって、悲観的な報道も多数見られます。そこには一体どのような問題が横たわっているのでしょうか。メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』の著者で航空機事情にも精通する作家・冷泉彰彦さんが、その原因を探ります。
三菱MRJ、5度目のデリバリー延期の原因とは?
日本にとって久しぶりの民生用量産航空機となる三菱MRJですが、今回は5回目となる納入時期の遅延が発表になっています。これで納入時期は、2018年半ばということになり、当初日程から5年以上の遅延となります。
この遅延により、発注者からのキャンセルを招く危険だけでなく、ライバル社による後発機種に、納入時期で先回りをされる可能性もゼロではなくなってきました。
モノづくりということでは最先端を行っている日本の製造業で、しかもお得意のはずの「輸送用機器」というカテゴリで、どうしてこうしたトラブルが連続するのでしょうか?
一部には、三菱という企業に「上意下達」のカルチャーがあり、現場からのネガティブ情報が上がりにくいとか、あるいは、日本独特の形式的なコンプライアンス病のために、動きが取れなくなっているという解説があります。
ですが、問題は別のところにあると思います。
今回のトラブルは空調の監視システムが「故障の警告」を出したにも関わらず、空調は正常に動いていたという問題です。そこで監視システムのコンピュータを入れ替えたのだそうですが、問題解決が長期化しそうだったので、試験初号機を日本からアメリカに移送するのを延期することとなった、というストーリーです。
また、前回の2016年に起きたトラブルは、空調配管のセンサーに米国製を使用していたために、不具合の対応に時間がかかったというものでした。今回の問題と、2016年の問題が関連しているかどうかは現時点では不明ですが、2016年の問題は「空調のセンサー」という重要な部品に「国産品が使えない」ということでした。
その他にも、使用していたケーブルが「航空機用の規格を満たしていなかった」という問題が出たこともあります。