官邸サイドは「捏造された怪文書」とするものの、ここに来て前川前事務次官が「本物」と証言した、加計学園獣医学部新設を巡るいわゆる「総理の意向」文書。メルマガ『国家権力&メディア一刀両断』の著者・新 恭さんは、森友学園問題と当問題における関係省庁のガードの強弱の違いを比較。「邪推」と断りを入れつつ、文科省には年初に発覚したある問題に関して安倍政権へのわだかまりがあるのではとした上で、巷間「第三の森友学園問題」とも言われる国際医療福祉大学の医学部新設についても言及しています。
「総理のご意向」は岩盤規制突破かアベ友優遇か
やっぱり、と思った人は多いだろう。「アベ友」が経営する学校法人の大学獣医学部新設を急いだのは「総理のご意向」だった。これでは、国家戦略特区なるものが、安倍首相の思い通りにできる便利な装置と思われてもしょうがない。
森友学園は大阪府の審査基準緩和と安倍首相夫妻の威光で小学校をつくろうとした。加計学園は安倍首相肝入りの国家戦略特区による特例で大学の獣医学部設置を認められた。安倍首相の唱える岩盤規制の突破とやら。聞こえはいいが、誰のためにやっているのか。
朝日新聞が5月18日の朝刊で報じた加計学園に関する文科省作成の文書には、その会合に出席した四人の官僚の実名が記されている。日付は平成28年9月26日。出席者は内閣府から藤原豊審議官ら二人、文科省から高等教育局の浅野敦行専門教育課長ら二人。
この顔ぶれで話し合われた内容のうち、留意すべき点を文科省側がまとめた文書(下記はその一部)らしいが、いまだ文科省は「確認中」として、文書の存在を認めようとしない。
平成30年4月開学を大前提に、逆算して最短のスケジュールを作成し、共有いただきたい。成田ほど時間はかけられない。これは官邸の最高レベルが言っていること(むしろもっと激しいことを言っている)。
朝日新聞が入手した別の文科省作成文書「大臣ご確認事項に対する内閣府の回答」には次のように書かれている。
今治市の区域指定時より「最短距離で規制改革」を前提としたプロセスを踏んでいる状況であり、これは総理のご意向だと聞いている。
これらの文書がオモテに出たことで、官邸の怒りをまともに受けた文科省がうろたえたことは想像に難くない。文書を誰が書いたかはすぐにわかるはずだ。「確認中でなんとも申し上げられない」と言って、とりあえず時間を稼いでいるが、菅官房長官が言うように捏造された怪文書なら、即座に「そんなものはない」と否定するだろう。
とはいえ、財務省のガードが固い森友疑惑とは違って、官僚の記録文書が朝日新聞にリークされたことは、文科省のなかに、安倍首相とその周辺に険しい視線を向ける人物が存在することを示している。
むろん文科省の名誉のために、内部資料を漏らした動機は、正義感とか良心とかいうたぐいのものであると信じたい。