このまま行く気か。「共謀罪」が本性を暴かれることなく可決へ

arata20170518
 

野党により提出された法務大臣不信任案も否決され、安倍官邸悲願の成立にまた一歩近づいた共謀罪。これまで政府は「一般市民は捜査の対象にならない」と説明してきましたが、果たしてそれは真実なのでしょうか。メルマガ『国家権力&メディア一刀両断』の著者・新 恭さんは、これまでの国会等のやり取りを丁寧に分析しながら、この法案の危うさを指摘しています。

一般市民に関係ないという共謀罪法案のウソに騙されるな

法案の正体がバレないうちに通してしまえというわけか。安倍自民党政権は、連立外に控える補完勢力、日本維新の会を抱き込んで共謀罪法案の修正案をでっち上げ、5月19日にも衆院法務委員会で可決するかまえだ。

自公両党と日本維新の会が合意した修正案は、取り調べの可視化録音・録画)を検討することを、法案の付則に盛り込むというのが主要な中身である。

取り調べの可視化は昨年、刑事訴訟法が改正され、裁判員制度対象事件や検察官独自捜査事件に採用されることになっている。

そこに共謀罪の事件も可視化の対象として加えることを「検討する」というのだ。「検討」では付け焼刃にもならないのではないか。

可視化の効果そのものに疑問がもたれているのだ。「任意の取り調べ」は録音・録画されない。実際には「任意別件で聴取され、虚偽自白に追い込まれる例が多い。自白した後、決められたシナリオ通りの供述を録画するというのでは、可視化本来の目的にはほど遠い。

法制審議会委員として、「全事件、全過程での取調べの録音・録画」をめざした映画監督、周防正行氏が5月12日の報道ステーションで、可視化を盛り込む三党合意を「何の意味もない」と批判したのは当然のことだ。維新の賛成を得て、強行採決と批判されないようにしたい政権側の魂胆が丸わかりである。

それでも、数の力で押し切られたら、秘密保護法や安保法制と同じ結果となり、平和と人権を謳った憲法を空文化する悪法三点セットがそろってしまう。

ここは、ぜがひでも、国会やメディアの力で、世論を喚起しなければならない。東京五輪、テロ防止をキーワードに、共謀罪の危険性を包み隠そうとする政府のウソを徹底的に暴く必要がある。

9.11の同時多発テロ以降、アメリカを中心に急速に監視捜査が広がっている。スノーデン氏のリークで明らかになったように、CIAやNSAなど米国のインテリジェンスコミュニティはIT技術を使ってネット通信の傍受、盗聴などを行い、世界から多くの個人情報を集めている。

テロ集団、犯罪組織にとどまらない。一般市民にまで無差別に範囲を拡大している。あなたがたの命にかかわる「テロ対策」なのだから、市民的自由など少々我慢せよといわんばかりだ。

日本政府もそれに追随するかのように、「テロ等準備罪」と名を変えて共謀罪の法案を提出してきた。共謀罪は二人以上が、対象犯罪について合意、計画し、準備したら処罰するというもので、合意、計画があったと捜査当局が疑えば捜査に着手できる。

殺人予備など、いくつかの犯罪に既遂、未遂以前の予備罪が設けられているが、それでは不足で、さらに軽いはずの準備罪、合意するだけの共謀も、捜査の対象にしようとするのだ。

実際に犯罪が行われていないのだから、形のないもの、人の心の内やコミュニケーションを捜査するということになる。それを277種類もの犯罪に適用しようというのである。

常識的に考えて、何の罪もない一般市民が、あらぬ疑いをかけられて、捜査の対象となり、冤罪に巻き込まれる恐れは格段に増えるだろう。

多くの法学者や、ジャーナリスト、有識者が、疑問を呈し、あまたの国民が不安を抱くのは当たり前のことだ。

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