森友学園は昭恵夫人、加計学園は安倍首相の案件といえるが、いずれもその背後で動いているのは今井尚哉首席秘書官である。今井秘書官が総理夫人付職員の実質的な上司であることは「米『北爆』危機の裏で森友問題に浮上した、今井秘書官という黒幕」でもふれた通りだ。
日本獣医師会との関係から獣医学部新設に反対の立場であるはずの農水省をねじ伏せる腕力をふるえるのは今井秘書官をおいてほかにないだろう。
加計学園が企画して今治市に持ち込み、2007年から7年かけて構造改革特区指定による獣医学部の新設を要望しても叶わなかったものが、安倍首相が国家戦略特区と名を変えて、自ら議長に就くと、とんとん拍子で「腹心の友」の経営する学園の思い通りに進んでいったのだ。
ちなみに、獣医学部のある大学をあげてみよう。
北海道大、帯広畜産大、岩手大、東京大、東京農工大、岐阜大、鳥取大、山口大、宮崎大、鹿児島大、大阪府立大、酪農学園大、麻布大、北里大日本大、日本獣医生命科学大。
これらの大学に岡山理科大が加わって、同じようなレベルの獣医教育を実践できるのか、というのが日本獣医師会の素直な疑問なのではないだろうか。
昨年11月9日の国家戦略特区諮問会議で麻生副総理が苦言を呈した。
法科大学院を鳴り物入りでつくったが、大学院を出ても弁護士になれない場合もあるのが実態ではないか。規制緩和はやるべきだが、上手くいかなかった時の結果責任を誰がとるのかという問題がある。この種の学校についても、結果、うまくいかなかったときにどうするかをきちんと決めておかないと、そこに携わった学生や、それに関わった関係者はいい迷惑をしてしまう。
これが、諮問会議の出席者が包み隠している本音ではないか。安倍首相だけが道理にかなわないところへ突っ走っていることを誰もが承知のうえで、黙りこくっているように思える。
昭恵夫人は、加計学園が運営する御影インターナショナルこども園(神戸市)の名誉園長もしている。夫の「腹心の友」が経営する保育施設ゆえであろう。
加計学園への入れ込みようを見ても、私情が政治と明確に区別されているとは言い難い。森友学園問題で、安倍首相夫妻が被害者のごとくふるまうのは、まことにおかしなことである。日本のトップによる政治の私物化は、ひょっとしたら韓国以上なのではないだろうか。