「アート」と呼ばれるものには際限がなく、誰かがアートだと定義した時点で、それは立派なアートになるのだと思います。今回ご紹介するアーティストの本業はタトゥーアーティスト。いわゆる入れ墨師であるノルウェー在住のDino Tomic氏の手がける作品は、なんと「塩」でできています。日本にも「塩の芸術家」と呼ばれる山本基さんという方がいらっしゃいますが、果たして、どんな作品なのでしょうか?
息を飲んで見守らずにはいられない!「匙加減」一つで変化していくソルト・アートの世界
タトゥーは日本では今でもあまり馴染みがありませんが、欧米ではタトゥーは立派なアートの一つであり、特に若者はいろんなタトゥーを楽しんでいます。
そんなタトゥーを手がけるTomic氏は、タトゥー・アートだけには飽き足らず、これまでにも実に3年間、時間数にして約1400時間もの製作期間をかけ、まるで写真のように精巧でとにかく巨大な自身の家族の肖像画を描いたり、とにかくアートという分野にかける貪欲な探究を続けています。
今回、Tomic氏に伺ったところ、大学でアートを専攻した同氏は、常に新しいものを追求し続けた結果、この塩を使ったアート、すなわち「ソルトアート」を思いついたのだそう。
普段使用する塩の量は実に5〜20kgと、食卓に置かれる調味料とはまさに桁外れ。
入れ墨師であり、画家でもあるTomic氏にとって、スタイルを変えても自分を表現するという意味では何ら違いはないとのこと。
また、自身の作品に「塩」という、実に不安定で扱いにくい素材を用いることによって、見る人たちにこの世に何一つとして永遠に存在するものはなく、すべてのものは脆く崩れ落ち、失われてしまうものだというメッセージを伝えたいのだそう。
さすがアーティスト、観点も独特ですね。
Tomic氏の作品の数々。とても塩でできているとは思えません!
これは色付きの砂で描いたもの。
まさに指先の匙加減というマジック!
際限も正式な定義も存在しない「アート」の世界において、必要なのは「探究心」と好きなものに取り組む強い「意志」に限るのかもしれません。
日本にもTomic氏のように、ひたすら好きなものを追求し、自分を素直に表現する人々がもっともっと街中にごく自然に溶け込み、アートの持つ自由さを日々感じられるようになれば、とても素敵ですよね。
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取材・文/貞賀 三奈美