昨年大ヒットとなったドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」。本家は恋愛を扱った作品ですが、無料メルマガ『いじめから子供を守ろう!ネットワーク』では、この言葉・考え方は「いじめ対策にも有効」とします。今回の記事執筆者・こしがや じろうさんは、関西で編成された陸軍部隊の「合理的な精神を発揮して生き残る様」を紹介しつつ、いじめ被害にあった際にどう動くべきか、どう戦うべきかについて記してくださっています。
「逃げるは恥だが役に立つ」
「逃げるは恥だが役に立つ」というテレビドラマが話題となりました。同名のマンガが原作の、どうやら恋愛ものの作品だったようですね。しかし、そちらの方面には全く縁のない私にすれば、恋愛など他の惑星の話のようですので、内容に立ち入ることは遠慮いたしまして、言葉の響きのみを対象に、考察してみることと致します。
しかしこの題名は、なんとも意味深いものです。兵法的観点で考えてみると、「敵の大群・強敵に対しては、柔軟に対処する」ということになりましょうか。
たとえば、敵の大軍が現れた時に、そのままガチンコでぶつかれば、当然、全滅することになります。ですが、柔軟に考えて対応すれば、勢力を保ったままで、効果的に抵抗を続けられるということです。
これは人生全てに当てはまることだと思います。何に対してであれ、がちんこで正面からぶつかるだけだと、どうなるか。結果は、完全勝利か、こちらの敗北で全滅するかのどちらかになってしまいます。それよりも、巧妙に立ち回って、有利な情勢に導くのが大事です。なんなら少しぐらい逃げてもいいんだよ、ということでしょうか。
「逃げるは恥だが役に立つ」で私が思い出したのは、先の大戦で戦った関西で編成された陸軍部隊のことです。関西の部隊は、歴史的に「弱兵」として有名です。大阪編成の歩兵第8連隊など、「またも負けたか8連隊」と揶揄されるほどでした。もちろん、実際に8連隊が弱かった訳ではありません。
しかし、現実主義の関西の兵隊さんたちが、「あほくさ」「やってられまへんがな」と、合理的精神を発揮して戦いに生き残る様を目の当たりにした、他の地域の武士道精神バリバリの「強兵」からは、「弱い」と思われたのかもしれません。
たとえば、「強兵」として有名な、九州や東北編成の部隊ですと、「死守せよ」と命令されれば、本当に全滅するまで踏みとどまって戦います。文字通り、全員戦死して部隊が消滅するまでです。
それが関西の部隊になると少し違っていたようです。日本軍が雪崩を打って敗退していたビルマ戦線のことですが、「死守」命令が出て全滅していたと思っていた関西の部隊が、ひょこっと現れて報告してくる、皆、驚いたことでしょう。単純に全滅せずに、後々まで戦ってくれて大助かりだったという、当時の参謀の記録が残っています。
勇猛果敢に大敵に立ち向かって、全滅するまで戦うのは、それこそ、誇るべき日本武士道精神でしょう。しかし一方、多少卑怯に見えたとしても、図太く長く生き抜いて、抵抗をし続けるというのも、それもまた戦い方の一つであると思います。