東芝を追い詰めた、日本式「意思決定」プロセスの弊害

 

ネットや雑誌などで連日報道されている、東芝の巨額損失問題。そのきっかけとなったのが、海外企業との不利な契約条件を見破れなかったことによるものと言われています。メルマガ『週刊 Life is beautiful』の著者で世界的プログラマーの中島聡さんは、今回の東芝問題は「日本式意思決定プロセス」が原因となった可能性を指摘。日本人であれば「一旦社に持ち帰って検討します」という言葉に何の違和感も覚えませんが、海外でその常識は通じなかったようです。この記事では、東芝側の担当者が追い込まれたギリギリの心理状態についても分析しています。

日本企業と契約社会

先週号で、東芝の抱える原発問題の経緯を書かせていただきました。ウェスティングハウスへの投資そのものが大きなリスクを抱えるものだった、というのもありますが、共同出資者に万が一の時には東芝に株を押し付けて逃げる権利(プットオプション)を与えてしまったり、ウェスティングの債務を親会社の東芝が保障しなければならない契約を結んでしまうなど、会社にとってとても不利な契約をいくつも結んでいるために逃げるに逃げられなくなっているのが大きな問題なのです。

私はこれまで仕事の上で日米の会社間の契約にいくつか関わったことがありますが、毎回思うのは、日米の交渉力の差です。米国側は、経営陣から全権を委任された責任者がその場でギリギリの交渉をしてくるのに対し、誰がものを決めているのかが曖昧な日本側は、難しい話になるといつも「持ち帰って相談」になってしまいます。日本側は社内のコンセンサスを取るために莫大な資料が必要で、一見慎重に見えますが、逆に一度「やる」と決めてしまうと、後には引けなくなるので、米国側に足元をみられてしまいます

先日、この話を知り合いとしたところ、「戦後だけ見ても、日本企業は、何十年も米国企業とビジネスをしているのに、なぜいつまでたっても対等な交渉ができないの?」と質問されました。

これに関しては、私なりの答えを持っています。大雑把に言えば「文化の違い」、もう少し具体的に言えば「契約書に関する意識の違い」と「意思決定プロセスの違い」にあります。

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