またも東電の隠蔽工作が明らかになりました。再稼働の審査が進む柏崎刈羽原発の免震重要棟の耐震性に問題があることを知りながら、3年もの間隠し続けてきたというのです。これを受け、メルマガ『国家権力&メディア一刀両断』の著者・新 恭さんは東電について「不都合な真実を隠蔽する官僚体質が抜けないまま」と厳しく批判、再稼働についてもますます視界不良になったと断言しています。
柏崎刈羽原発をめぐりまたも東電が隠ぺい工作
原子力規制委員会は、東電柏崎刈羽原発の再稼働についての審査を今年度中にも終える段取りで、東電からの聞き取りを進めていた。
ところが、詰めの段階のこの時期になって、どんでん返しが起きた。2月14日の規制委会合。大量の提出資料をもとに説明をしていた東電の担当者が、会合開始から1時間半を経たあたりで、危うく聞き流しそうになるほど淡々と重大な説明をはじめたのだ。
柏崎刈羽6号、7号炉の緊急時対策所としましては、免震重要棟と5号炉緊急時対策所の2か所で構成しております。…どういった地震までもつ設備かは免震重要棟につきましては建物上屋変位量75センチ未満の地震力に対し機能を喪失しない設計といたします。
資料には「設計を修正する」と、はっきり書かれている。なのに「修正」の部分を省いて、「設計といたします」とサラリと言う。これを聞いて不審点に気づくのは専門家だけだろう。
中心メンバーである更田豊志委員が怪訝な表情を浮かべながら言った。「まあいいや、議論したらはっきりするかもしれない。どなたか質問は」。
その後の質疑や、出された資料をじっくり読むと、筆者にもしだいに意味するところが分かってきた。
要するに、免震重要棟は水平方向に75センチ揺れ動く大きさの地震には耐えるように設計されている。逆に言えば、75センチ以上も水平方向に揺れる地震に遭ったら建物が壊れたり、居住性が損なわれたりして、司令塔の役目を果たせない可能性があるということのようだ。
柏崎刈羽原発の免震重要棟は2009年に完成している。2007年の新潟県中越地震で緊急時の対策室を含む事務本館が被災し、初動対応が遅れたことから、大地震に備えた緊急時対応施設として免震重要棟を新設した。
その後、福島第一原発の事故が起こり、新規制基準が設けられたため、2013年から14年にかけ、東電は柏崎刈羽原発の再稼働を申請するため、設備の耐震性を試算した。
その結果、免震重要棟の耐震性は、敷地内で想定する最大級の地震の揺れ「基準地震動」の7つのパターン、いずれを入力しても、既設のダンパー(免震装置)では揺れを吸収しきれず、建物の水平方向の変位が75センチ(線形限界)を上まわる大揺れとなることがわかった。これほどの揺れになると建物がもたない可能性が高い。
つまり、新設された免震重要棟は、新基準で求められる耐震性を有さないことが2014年の時点で判明していた。にもかかわらず、それを規制委員会にもいっさい知らせないまま、耐震性が確保されているものとして説明してきたのである。
そしていきなり今回、基準をクリアするためのダンパーの開発には「まだ時間が必要」として、75センチ未満までの揺れなら耐えうる設計に「修正する」という内容の、寝耳に水の話を持ち出したのだ。
免震重要棟が使えない場合、5号炉の建屋内の緊急時対策所が基準を満たしているので、状況次第ではそちらを使えると弁解するが、何のための免震重要棟なのか。